国内サーバー/ストレージ市場で、保守サービスを強化する動きが活発になってきた。今年2月、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)とデルが、それぞれサーバーやストレージの保守サービスを大幅に強化することを明らかにした。国内メーカーでは、富士通がサーバー保守を強化する意向。それぞれ、保守サービスの強化で、ハードウエアの売り上げ増を目指す。

 日本HPの保守強化策は、サーバー/ストレージを24時間遠隔モニタリングするサービス「HP インスタントサポート・エンタープライズ・エディション(ISEE)」の無償提供。2月3日に開始した。出荷するサーバーに自己診断ツールをインストールしておき、障害予兆を検知したり障害が発生すると、HPにインターネット経由で自動通知する。

 日本HPテクノロジー・ソリューション企画統括本部ソリューションポートフォリオ本部の相原浩司ソリューションマネージャは、「ISEEにより、顧客の業務継続性を大幅に向上できる。すでにISEEを展開している欧米では、通知から修理完了までの時間が平均で20%短くなった」と説明する。ISEEは、HP側にもメリットがある。トラブルが起きてから対処するより保守工数が少なく済むからだ。このため、ISEEが順調に普及すれば、保守契約料を値下げする考えである。

 一方、デルは2月8日、「エンタープライズ コマンド センター」(ECC)を開設した。「24時間365日、保守サービスの“管制塔”の役割を果たす施設だ」(デルの長谷川マイケル エンタープライズ事業本部長)。この施設には、全国の保守作業の進捗を常時チェックする専門部隊が常駐して顧客からの障害報告を受け付け、保守要員をアサインする。以後、保守作業の実施、障害復旧まで一連の状況を監視。保守作業の進捗が遅れた場合、ECCがサーバーの開発チームやソフトウエア・ベンダーと連絡をとったり、追加のサポート要員/部品を手配して、現場の問題解決を支援する。「保守プロセスの属人性を排除し、サービスの質を改善する基盤となる。地震・台風などの情報を常時チェックしており、災害時でも物流網を確保し、顧客から連絡を受ける前に部品在庫を用意できる」(眞砂良明ECC所長)という。

 国内メーカーでは富士通が、今春出荷するサーバー製品に、HRM(ハードウエア・リソース・モニター)と呼ぶ新たな保守管理ツールを組み込んで出荷することを明らかにした。保守要員が持ち込んだ管理端末からサーバーにアクセスすると、HRMが収集したサーバー構成部品のステータス情報がグラフィカルに表示される。故障や増設作業の際に対象となる部品を正確に特定しできるので、保守作業を大幅に効率化できる。これまで保守作業では、故障部品の特定に手間取ったり、別の部品を取り替えてしまい手戻りが発生して、障害復旧時間が長引くことがあった。中山恵子常務理事は、「メインフレーム保守で培ってきた技術を利用してHRMを作った」と説明する。

 富士通は、2000年からHPと同様のリモート保守サービスを、保守契約を結んだ顧客に無償提供してきた。現在、2万台の接続実績があるが、「今後さらに接続台数を増やすべく、顧客への働きかけを強化する」(中山常務理事)。

広岡 延隆=日経コンピュータ

お知らせ:上記記事に関して日本HPから、「ISEEの普及を理由とした保守契約料の値下げについては、担当者が将来の可能性として指摘したことであり、現状、日本HPとしての計画はありません。」との申し入れがありました。以上、お伝えします。