米IBMが2月24日(米国時間)、2004年の第4四半期と通年の決算内容を修正したことに対し、その原因となった日本IBMは25日、同社の決算報告に合わせて、その理由を説明した。だが、大歳卓麻社長は「社内規定の違反があった。詳細は社内のことなので、誤解を受けないように説明するのは難しい」と繰り返すだけだった(写真)。

 問題の修正は、米IBMの2004年12月期決算において、通年で2億6000万ドルの売り上げと、同額のコストが不正計上であり、これらを減額したもの。うち5000万ドル分は第4四半期に減額済みなので、通年で2億1000万ドルの売り上げと利益を減額した。原因は日本IBMのハードウエア取引における会計処理だとする。

 大歳社長の説明によれば、日本IBMで起こった不正処理は、他社製品も組み込んで提供するシステム・インテグレーション(SI)事業で、日本IBMからの“付加価値”が全くないハードウエア製品の会計処理において、本来なら手数料分だけを売り上げ計上するところ、販売金額を計上したこと。例えば、100円の製品を105円で納めた場合、計上できるのは5円の手数料分だけだが、105円を売上計上していたという。

 こうした事実が第4四半期の決算で発覚し、そこから2004年度全体に遡って再検証したところ、通年に渡り会計上の不正が見付かった。ただ、これらの不正は「日々、改善されている社内規定の変更により“不正”に該当する処理になった」(大歳社長)だけで、2003年度以前の会計処理に問題はないという。加えて大歳社長は「日本IBMの内規は、日米が定める会計基準より厳しく、民事/刑事上の問題はまったくない」とした。

 不正処理に携わった人数や部署、具体的にどんな社内規定に違反しているのかといった詳細については「一部の社員」とするだけで、大歳社長は「いずれも社内のことなので、ご容赦願いたい」と繰り返した。今後、関係した社員を処罰する。

 現在、IT業界では、メディア・リンクスの粉飾決算事件を機に、いわゆる“口座貸し”と呼ばれる取引慣行を見直す気運が高まっている。日本公認会計士協会が3月をメドに、会計処理のガイドラインを出す計画で、昨年末にITサービス大手のTISが処理方法の変更に伴い売上高を下方修正するなど、一部で先行修正も始まっている。口座貸しは、顧客企業と直接契約できる大手企業でなければ難しいとされる。今回の日本IBMのケースも、新ガイドラインに照らせば、社内規定の範囲を超えて不適切と判断される可能性はある。

 IBMは、自社製品においては、顧客名が特定できない受注を受け付けなかったり返品処理を厳しくしたりするなど、前倒し計上などの不正を防ぐための手だてを相当厳しく実施している。それでも、他社製品を扱うSI事業においては“抜け道があった”ということになる。

志度 昌宏=日経コンピュータ