CRM(顧客関係管理)のASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)サービスなどを展開する米salesforce.comの日本法人は2月23日、2005年は大企業と中小企業の両市場への営業活動を同時に強化する方針を明らかにした。「グローバル化する経営環境の中、日本市場もようやくCRMを早期に実現したいという気運が高まってくる」(宇陀栄次社長)と判断した。

 大企業市場には、システム・インテグレータなど同社パートナー企業とともに営業を仕掛ける。既に、金融機関や生命保険会社などとの商談が進んでいる模様。いずれも、個人市場を開拓するために、コールセンターにテレビ会議機能を組み込むなど、システム面の強化を図っている業界だ。salesforce.comは、コンタクトセンターとの連携を可能にするsupportforce.comというサービスも提供している。

 一方、中小企業市場にはコールセンターを使った電話営業に加え「口コミ」(宇陀社長)による顧客層拡大を期待する。具体的には、コールセンターでは同社自身がテレビ会議機能を使うほか、1ユーザーなら無料の試用サービスがきっかけになると見る。米国市場でも「ほとんど宣伝はせず、“口コミ”で市場が広がってきた」(同)とする。

 CRMの市場拡大で逆風になると見られるのが、4月1日に施行される個人情報保護法。この見方に対して同社は、米国監査法人によるセキュリティ監査基準SAS70typeIIの監査が完了し、情報処理における内部統制システムが有効に運用されていると認められたため「むしろ安心感になる」(宇陀社長)とした。

 米salesforce.comは1999年に設立されたサービス会社で、2005年1月末時点に全世界で1万3900社、22万7000ユーザーを獲得している。2005年1月期の売上高は1億7600万ドル(約194億円)、利益は360万ドル(約4億円)だった。このうち、日本を中心としたアジア地区の売り上げが全体の6.5%を占め、成長率は全世界の前年比82%増を上回る同93%だったという。

 同社のサービスは現在、米国にあるセンターから全世界に提供されている。アジア市場や欧州市場が立ち上がってきたことから、センターを日欧米の3拠点に展開することを検討していることも明らかにした。

志度 昌宏=日経コンピュータ