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 NTTは2月18日、人体や物の表面を伝送経路にしてデータ通信できる技術「RedTacton(レッドタクトン)」を開発したと発表した。手先など露出した肌の表面や、衣服・靴などの表面に、ごく微弱な電界を誘起させて、通信する専用のトランシーバを開発。最大10Mbpsで通信できるようにした。

 NTTマイクロシステムインテグレーション研究所の門 勇一スマートデバイス研究部長は、「RedTactonを使うことで、人が物に触ったり、踏んだりすることをきっかけに、身につけている携帯端末と、身近な物に組み込まれたコンピュータが通信を始められる。ユビキタス社会を目指し、人にやさしいネットワークが構築できる」と説明する。

 例えば医療現場で、薬の誤用を防ぐことに利用できる。あらかじめRedTactonの小型トランシーバを薬の缶に貼り付けておき、別のトランシーバをつけた携帯端末をユーザーに持たせておく。ユーザーが薬の缶を触れると、服用してはならない薬だった場合は、その旨を携帯端末の画面に表示し、音声でユーザー伝える(写真[拡大表示])。携帯端末は上着のポケットに入れていても正しく動作する。

 NTT第三部門ビジネスクリエーションプロデュースチームの阪本秀樹担当部長は、「身体の表面だけでなく、机や壁、金属などの表面も伝送経路にできるので、テーブルとノート・パソコンにあらかじめトランシーバを組み込んでおけば、ノート・パソコンを置くだけでテーブルのトランシーバと連動したプロジェクタに、パソコンの画面を投影することが可能だ」と話す。

 これまでも、複数のベンダーが、人体や物質の表面を伝送経路にする通信方法を発表している。NTTによれば、他社の通信方法は微弱な電圧や電流の変化を検知するものであるためにノイズが乗りやすく、通信速度が最大で数Mbps(ビット/秒)にとどまっていたという。

 NTTはノイズの影響を受けにくい電界に着目することで、通信速度を引き上げることに成功した。微弱な電界の変化を感度良く検知できる光センサーを採用し、10Mbpsを実現できたという。

 NTTは4月にも、RedTactonのトランシーバを企業や団体に提供して共同で実証実験を開始する。「共同実験を通して、実用性を確かめたり、事業として成立するかどうかをみていきたい」と、阪本担当部長は話す。NTTは共同実験のパートナを募集し、5社ほどと実験を開始したい考えだ。

西村 崇=日経コンピュータ