シスコシステムズは2月17日、ルーター/スイッチ向け技術を開発する拠点「日本研究開発センター(JDC)」を、東京・西新宿に開設した。ブロードバンドや携帯電話の普及で先行する日本で新技術を開発し、それを製品化して世界各国に水平展開することが狙いだ。

 「日本は米国の5年先をいっている。つまり日本の市場が必要とする技術を開発することは、今後世界中で利用される技術を先取りすることにほかならない」と、JDCの所長に就任する、米シスコ・システムズのジョン・ハーパーIPコアテクノロジーグループ副社長(写真)は、設立の意図を説明する。米シスコはこれまで、世界8カ国に開発センターを設立しているが、言語対応や各国の通信環境に合わせるローカライズが主な目的。新技術開発をミッションとするのは、JDCが初めてのケースである。

 シスコシステムズの黒澤保樹代表取締役社長は、「6年も前からの念願がようやく叶った。日本の技術者は優秀なので、世界につながる活躍の場を提供したかった」と、興奮気味に語る。JDCのアドバイザリーボードの一員である東京大学大学院の江崎浩 助教授は、「日本のネットワーク技術者は苦労して日本のブロードバンド環境を構築してきた。JDCの発足で、そのノウハウを形にして世界に発信する窓口ができた」と、JDCの役割に期待を寄せる。

 JDCには、10人のエンジニアを配属する予定。日本の通信事業者やユーザー企業との連携を深めるため、「日本語を話せることが条件」(ハーパー副社長)である。昨年12月に発表した、富士通との共同製品開発とJDCとの関係については、「日本市場でニーズが高い技術を研究開発するという意味では方向性は同じ。しかし富士通との共同開発はあくまで日本向けの機能。JDCは、開発した技術をグローバルに展開する点が異なる」(ハーパー副社長)と説明する。

 JDCがまずフォーカスするのは、(1)ネットワークのエッジで利用するアクセス制御やセッション管理などの技術、(2)IPv6関連技術、(3)モバイルIPなどのモバイル関連技術――の3分野である。開発した技術は、同社製ルーター/スイッチ製品のOSであるIOS/IOS-XRに搭載していく。

福田 崇男=日経コンピュータ