東京三菱銀行とUFJ銀行のシステム統合について一部新聞が先週末(2月5日や6日)に報道した内容に、一部誤認のあることが本誌の調べで分かった。

 新聞報道の趣旨は「統合後の勘定系システムには、東京三菱が採用している日本IBM製を使うことで大筋合意。口座の入出金などを管理する勘定系システムはIBMが担当し、融資や為替など個別の金融商品を管理する情報系システムは日立が担当する」というもの。しかし、両行のシステム統合担当者によれば「両行とも、勘定系や情報系といった単位で、動作環境や納入ベンダーにこだわってはいない。預金や融資、為替といった業務アプリケーションの機能・仕様の違いや先進性を議論しており『勘定系はIBM、情報系は日立』といった、いずれかの銀行にすべてを合わせる“片寄せ”方式にはなるとは限らない」と言う。

 背景には、両行ともが業務アプリケーションはグループのシステム関連会社を含め自前で構築していることがある。勘定系の動作環境として、東京三菱がIBM製メインフレームを、UFJが日立製メインフレームを使用していることは事実。だが、例えばUFJは、24時間稼働といった先進機能をいち早く実現してきた業務アプリケーションを採用してもらえるのであれば、プラットホームの移行を厭わないと主張している模様だ。加えて、勘定系で処理した取引の明細データを集計・分析し、その結果を店舗や本部の社員向けに提供する情報系システムは、両行ともIBM製プラットフォームで動いている。みずほ銀行や三井住友銀行、りそな銀行も情報系はすべてIBM製であり、情報系を日立に任せる必然性は乏しい。

 これら事実と新聞報道を読み比べれば、預金の機能は東京三菱の設計思想を、融資や為替の機能はUFJの機能をそれぞれ採用するとの方針が決まったとも推測できる。ただし、システム統合担当者も両行広報部のいずれもが、新聞報道を含めシステム統合の進捗状況について、「現在検討中。詳細は決定次第、公表する」との姿勢を変えていない。

 両行の勘定系システム統合は、今年10月1日の合併・統合時は、ひとまず双方のシステムを並存させ、リレー・コンピュータで接続。それから数年をかけて新システムに一本化していくとみられる。そのため両行は、構築済みアプリケーションの先進性だけでなく、異業種連携といったこれからのメガバンクに必要な新要件を満たすシステム像を含め議論を重ねている。

大和田 尚孝=日経コンピュータ