「中国やベトナムに、生産性だけでなく品質でも負ける恐れがある」。こう指摘するのは、20年以上にわたりテストや品質保証の専門活動を続けてきた、米レックスブラック・コンサルティング・サービスのレックス・ブラック社長だ。

 ブラック社長は、過去に米自動車業界が高品質な日本車に急速にシェアを奪われていった例を持ち出して、「同様なことがソフトウエア産業の新興勢力と、日本や米国など旧勢力の間で起こる」と予見する。

 その理由として、品質を高めるためのテスト手法や工程など最新のベストプラクティスを、新興勢力は取り入れやすい、ことを挙げる。過去に積み重ねてきた手法をもたないため、こだわりなく導入できるからだ、という。

 またブラック社長は、米国でプロジェクトの失敗が多い理由としても「テストや品質保証の能力が不足していることが大きく影響している」と認める。品質が低いという事実として、ブラック社長が知るシステム・インテグレータでは、バグを修正するサービスが売り上げの3分の2を占めるという。

 品質を高めるためのプロジェクト体制としていま必要なこととして「独立したテスト・チームを構成すること、コード・レビューと単体テストを独立した活動にすること、ソフト開発のライフサイクルにテストを統合させること」(ブラック社長)の三つを挙げる。最後に「テスターは自分の技術に自信をもって活動するように」とテスト技術者に向けエールを送った。

森側 真一=日経コンピュータ