米国のプライバシ保護団体「CASPIAN」が1月26日、ICタグ導入を計画している英大手スーパーを対象に、同社店舗での商品購入をボイコットするよう消費者に呼び掛けた(同団体のキャンペーン・サイト)。CASPIANが展開する消費者運動は、ICタグ導入を進める大手企業にとって無視できないほど大きな影響を与えている。2003年7月、米ウォルマート・ストアーズが予定していた実証実験を中止したのも、同団体の抗議に配慮したものと見られている。

 ボイコットの抗議を受けたのは、英小売スーパーのテスコ・ストアーズ。欧州とアジアに2300店舗を構える小売スーパーの最大手。かみそりメーカーの米ジレットなどと共同で、ICタグの実用化に向けた実証実験を展開している。

 CASPIANが問題視しているのは、ICタグの中でも、個々の商品パッケージに付ける「アイテム・レベル・タギング」と呼ばれるもの。これまでもアイテム・レベル・タギングの導入を試みようとするとする小売業者に繰り返し反対してきた。本当の導入目的が、消費者の行動を逐一トラッキングすることで個々人の購買行動を分析したり万引きを防止したりすることで、プライバシ侵害を伴うものだと主張する。テスコは2005年内にも、一部の商品でアイテム・レベル・タギングを実施しようとしており、先にウォルマートが中止したのもアイテム・レベル・タギングの実証実験だった。

 CASPIANの設立者でディレクタ(議長)のキャサリン・アルブレヒト氏は同日、英国営放送BBCテレビのニュース番組に出演し「何万人もの消費者が、ICタグという“スパイ・チップ”を家に持ち帰ることになりかねない」と警告した。CASPIANは2003年7月、テスコが実証実験を行った店舗で、来店客に見えない場所に監視カメラを隠していたと指摘。カメラの映像とICタグの内容をひも付けし、来店客の購買行動を監視したとして、テスコを非難している

 こうした抗議に対しテスコは、アイテム・レベル・タギングの目的は「商品棚やレジに設置したリーダーでICタグを読み取り、在庫切れの解消や商品補充の効率化を図ることだ」との公式見解を発表。アルブレヒト氏が出演したBBCの番組に対しては「ボイコットを真剣に受け止めているが、客が購入した商品をトラッキングする意図はない」とコメントしている。

本間 純=日経コンピュータ