東京都の第二地銀である東日本銀行は1月17日、NECが提供するオープン勘定系システム「BankingWeb21」の採用中止を明らかにした。「既存システムの更新時期である来年1月までに、BankingWeb21の完成が間に合わない可能性が高まったため」(事務管理部の杉山典久主任調査役)。いったん決めたBankingWeb21の採用をキャンセルするのは、大光銀行(新潟県)に続き2行目。NECがBankingWeb21の開発にてこずり、第1号ユーザーである八千代銀行(東京都)の稼働が2年遅れた。その影響が後続の採用行に及んだ。

 東日本銀行の現行勘定系は、富士通が開発した地銀向けシステムをベースにしたもの。これを同行は大光銀行と共同利用している。東日本銀行と大光銀行は2002年6月、次期共同システムとしてBankingWeb21の採用を決めた。しかし、大光銀行は昨年7月にBankingWeb21の導入を撤回、来年1月をメドに日本ユニシスが提供する地銀向けシステムに切り替えることにした。これを受け東日本銀行もBankingWeb21の導入可能性について検討を続け、今回の結論に達した。

 東日本銀行と大光銀行が現在利用している共同システムのホスト(富士通製メインフレーム)は来年1月にリース切れを迎える。このため、東日本銀行は年末に富士通製メインフレームを新機種に更新する。ただしメインフレームの更新後も、アプリケーションは現行のものをそのまま利用する。これにより「移行のリスクやコストを最小限に抑える」(杉山主任調査役)。現行システムは仕様上、24時間連続で稼働できないが、「1日の停止時間は深夜30分だけなので当面は問題ない。今後の24時間化については現時点では未定」とする。

 今回の決定に併せ、東日本銀行は勘定系を中核とする基幹系システムの開発・保守・運用を、富士通にアウトソーシングする。契約期間は来年4月から8年間。契約金額は公表していない。アウトソーシングに伴い、来年3月末までをメドに、同行のシステム子会社である関東データセンターの株式のうち95%を、富士通に譲渡する。富士通は買収したシステム子会社を、主に中小地銀向け共同システムの運営会社に発展させていく考え。中規模以上の地銀向けには、別の勘定系パッケージ「PROBANK」を展開していくと見られる。

 ここ数年、自社の地銀ユーザーを他社に奪われ続けてきた富士通にとって、東日本銀行の決断は、久しぶりの朗報である。一方、NECにとっては、BankingWeb21の導入を予定する他の6行(愛媛・トマト・びわこ・高知・大東・三重)に影響が及びかねない一大事である。

大和田 尚孝=日経コンピュータ