「プロジェクトマネジメントには、急がば回れの精神が重要」--。日本IBMの理事・技術、ビジネス・エンジニアリング担当である神庭(かんば)弘年氏は、1月7日に開催されたプロジェクトマネジメント学会の法人会員向け特別セミナーでこう語った。

 神庭氏は、「スケジューリングの技」と題して講演。プロジェクトの進行に重要なのは「クリティカル・パスの把握だ」(神庭氏)とした。同氏は日本IBMで製造業を中心に数々の難プロジェクトのプロジェクト・マネジャを歴任してきたベテランである。

 クリティカル・パスは、プロジェクトの完成を遅らせないために絶対に遅らせてはならない工程のこと。クリティカル・パスとなる工程に遅れが出たときには、リソースを追加投入しなければならないと考えられがちだ。これについて神庭氏は、「リソースの補充だけでは不十分。作業計画から見直し、タスクの流れを最適化することが重要だ」と訴えた。

 神庭氏は、今後のプロジェクトマネジメントの展望にも触れた。従来は、設計、開発、テストといった工程ごとにチームを分けるケースが多かったが、今後はその傾向が変わると見る。「プロジェクトをサブシステム単位などで複数の小グループに分割し、それぞれのチームが並列に、設計からテストまでの一連の工程を統合的に進めるスタイルが主流になるのではないか」(神庭氏)と語った。

 セミナーではこのほか、日立東日本ソリューションズの澤田美樹子氏が「実践!リスクマネジメント」と題して講演。リスク・マネジメントについて「プロジェクトのメンバーはもちろんのこと経営層の人間まで教育が必要」(澤田氏)と社内教育の重要性を強調した。

安藤 正芳=日経コンピュータ