「世界の戦闘地域では今でも子供が兵士として戦場にかり出されている。この現状をなんとしても広く知ってもらいたい」。こう語るのは、ロック・バンド元「T-BOLAN」のボーカリスト、森友嵐士氏(写真右)。森友氏が参加する世界の子供の平和を考えるプロジェクト「Peace Children プロジェクト」は、戦場で兵士として扱われている子供である「子供兵」の現状をまとめた映像をこのほど制作。12月24日からストリーミング配信(配信サイト)を開始した。

 このプロジェクトには、映像制作会社のアーティストハウスやコンテンツ配信会社のブロードバンドタワーといった企業数社、ウガンダで元子供兵の社会復帰支援を手がけるボランティア団体であるテラ・ルネッサンスとNPO(非営利組織)のネットワーク『地球村』の2団体が参加している。

 Peace Childrenは2004年10月、戦闘地域における子供の現状を訴えるために、森友氏の呼びかけで発足した。今回のネット配信は第1弾の取り組みといえる。配信している映像では、子供兵の問題が最も深刻といわれるウガンダの現状を10分ほどでまとめた。

 ウガンダでは1980年台後半以来、政府軍と反政府ゲリラの内戦が続いている。戦闘地域では、反政府ゲリラによって子供が誘拐され、男の子は兵士として働かされ、女の子は兵士の身の回りの世話をさせられたり、無理やり兵士の妻にさせられている。内戦開始以来、少なくとも4万5000人の18歳以下の子供たちが誘拐されているとみられている。ウガンダを含む世界全体では30万人の子供兵が確認されているという。

 映像には、現地のNGO(非政府組織)が運営している元子供兵のリハビリ施設で、元子供兵をインタビューしたシーンが紹介されている。インタビューは、テラ・ルネッサンスとネットワーク『地球村』のメンバーが2004年4月に行った。

 ウガンダでインタビューしたテラ・ルネッサンスの代表、鬼丸昌也氏(写真左)は「8人の子供を取材したが、なかには反政府ゲリラに誘拐されたあと、上官の命令で実の母親の腕を切り落とすというつらい経験をした子供がいた」と説明する。鬼丸氏によると、殺害の恐怖心をなくすため、近親者の殺害を子供に強要するのだという。

 コンテンツ作りのきっかけは2004年8月中旬、森友氏がある雑誌に掲載された、子供兵の問題を提起する鬼丸氏の記事を読んだこと。「昔の出来事だと思って読んでいたが、途中で今起きている問題だとわかった。信じられなかった」(森友氏)。そこで知人の紹介で鬼丸氏と会ったところ意気統合。鬼丸氏らがウガンダで撮影したビデオテープを編集して、インターネットで配信することになった。コンテンツ制作の監督として映画監督の林海象氏も参加している。

 「我々の未来とも言える子供たちがこのような現実に直面しているという事実をぜひみんなに知ってもらいたい。映像を見て共感してもらえたら、信頼できる友人や知り合いにこの事実を知らせて、自分たちに何ができるかを考えるきっかけにしてほしい」と森友氏は訴える。

西村 崇=日経コンピュータ