「聯想集団(Lenovo Group)に事業を売却することで、当社製品の品質が下がるのではないかとの声があるようだ。だが、断じてそんなことはない」。米IBMでデスクトップ/ノート・パソコンの製品責任者を務める、ピーター・ホテンシャス パーソナル・システム・グループ プロダクツ&オファリング担当バイス・プレジデントは12月17日、記者会見の場でこう宣言した。

 ノート・パソコンのThinkPadをはじめとするIBM製パソコンは、品質の高さには定評がある。しかし、今回のパソコン事業売却で、その品質を保てるのかどうかを疑問視する声が出ている。ホテンシャス バイス・プレジデントのコメントは、この声に対するもの。「我々はより高品質の製品をより低価格で提供していく」と、同氏は強調した。

 製品の品質が変わらない理由について、ホテンシャス バイス・プレジデントは「厳格な規律に基づいた開発のマネジメント体制を維持するため」と説明する。「現在のThinkPadの品質を保てるのは、工程管理や品質管理といった、開発のマネジメント体制が確立しているからだ。マネジメントは、変わらず現在のIBM社員が担当するので、今と同じ品質を維持できる」(同)。

 ホテンシャス バイス・プレジデントは、「中国で生産することが品質を劣化させると誤解している人もいるが、それは違う。当社はすでに、ノート型とデスクトップ型を含めてパソコンの一部を中国で生産している。この点では今後も変わらない。ただし、新体制に移行後も、現在IBMが所有する工場を使うかは未定だ」と続けた。生産に関する品質だけでなく、使い勝手やデザインの良さといった設計に関する品質についても一定の水準を保っていく考え。「IBM製品が突然別物になることはない。少なくとも18カ月先までは製品スケジュールが決まっており、ThinkPadが丸くなったり、銀色になったりはしない」(同)。

 ただし、業界内では「事業の売却により社員のモチベーションが下がり、人材が流出するのではないか」という懸念の声もある。これに対し、ホテンシャス バイス・プレジデントは「そんなことはない。今回の提携はIBM、聯想集団の双方に有益。我々の部門はみなエキサイトしている」と否定する。

 ThinkPadの生みの親と言われる内藤在正IBMフェローも、「日本IBMの大和研究所などに所属する開発者や研究者たちの間でも、モチベーションの低下はない」と断言した。「大和研究所の開発者や研究者は、何よりThinkPadを開発することに喜びを感じている。その意味では、今後もなんら変わりはない」という。

矢口 竜太郎=日経コンピュータ