米シマンテックの幹部は12月17日早朝、日経コンピュータとの電話インタビューに応じ、半日ほど前に正式発表した米ベリタスソフトウェア買収の背景を説明した。シマンテックによるベリタスの買収額は約135億ドル(約1兆4000億円)。ソフトウエア・メーカーの買収としては史上最大規模となった(存続会社はシマンテック)。新シマンテックは2006会計年度(2005年4月~2006年3月)の売上高を50億ドルと予想しており、世界第4位のソフト・メーカーになる見通しである。

 日経コンピュータの電話インタビューに答えたのは、米シマンテックのエイジェイ・ゴーパル シニア・バイス・プレジデント。グローバル・テクノロジ兼コーポレート・ディベロップメント担当の同氏は、「顧客は情報保護のワンストップ・ソリューションを求めている。そのため、今まで分かれていた、攻撃から情報を守るセキュリティ対策と、内部で情報の冗長性を高める情報管理の二つを統合すべきと考えた」とベリタス買収の理由を説明した。セキュリティ関連ソフト最大手のシマンテックがストレージ関連ソフト最大手のベリタスを買収して意味があるのかを問うた質問に対する回答だ。

 ゴーパル氏は「(情報管理ソフト・ベンダーはいくつもあるが)ベリタスを選んだ理由は情報管理分野でリーダーだからだ。高い技術を持ち、かつ顧客に受け入れられている点を評価した」とする。その上で同氏は、「両社が同じ製品を持たないことが合併のメリットになる」と続ける。「お互いの技術を組み合わせることで、新たな製品が多く生み出せる」

 相乗効果が生まれる製品の例として、ゴーパル氏は真っ先に電子メール・ソフトを挙げた。「シマンテックは電子メールのスパム対策ソフトを持ち、ベリタスは電子メールのアーカイブ・ソフトを持つ。この二つを統合すれば、より効果的なメール管理が実現できる」。

 さらに「電子メールは一例。この合併により、新シマンテックは非常にユニークな会社になった。セキュリティ対策と冗長性対策の両方の製品群をそろえた企業は他にない。また、マーケット的にもあらゆるユーザー、個人ユーザーから大企業ユーザーまで、さまざまなOSのユーザーに対して製品を提供できる」と優位性を主張する。

 今回の買収は株式交換方式で行われ、交換比率はベリタス1株に対してシマンテック1.1242株となっている。新会社の会長兼CEO(最高経営責任者)には、現シマンテックの会長兼CEOであるジョン・トンプソン氏が就任。ベリタスのゲーリー・ブルーム会長兼CEOは、新会社の副会長兼社長に就任する。

 シマンテックは、ウイルス対策ソフト「Norton AntiVirus」 などを主力製品とするセキュリティ対策ソフト・ベンダー。これまでも積極的に企業買収を進めてきた。Norton AntiVirusのNortonも、もともとは1990年にピーター・ノートン・コンピューティングの買収によって入手したブランド。コンパイラ・メーカーを買収したこともある。2004会計年度(2003年4月~2004年3月)の売上高は18億7000万ドル。 2005会計年度(2004年4月~2005年3月)の売上予想は24億9500万ドルとなっている。

 一方、ベリタスはクラスタリング・ソフトの「Cluster Serverシリーズ」で名をはせた。2003年の売上高は17億7000万ドル。GAAP(会計原則)ベースの純利益は2億7420万ドルとなっている

鈴木 孝知=日経コンピュータ