公正取引委員会は12月14日、松下電器産業に対して警告を行った。警告の内容は警察庁が7月中旬に調達を実施した「放置駐車違反処理システム 1式」を、松下電器産業が4万円で受注したことが不当廉売で独占禁止法に違反する恐れがあるというもの。警察庁が用意した予算は1億3000万円だった(日経コンピュータ2004年8月23日号、業種別フラッシュに関連記事)。同社は本誌の問い合わせに対して、「厳粛に受け止め、再発防止および法令順守を徹底致します」(広報担当)と回答した。

 今回、松下電器が受注した案件の調達範囲は、専用端末を使用したシステムの実証実験と基本仕様の策定。2005年度以降、各都道府県警察が、同仕様に基づいて順次システムを調達する予定である。松下電器が今回の受注で、今後のシステムの調達で優位に立つ可能性が強かったため、公取委は「他の競争事業者の事業活動を困難にさせる恐れがある」(事務総局審査局公正競争監視室)と判断した。

 こうした経緯を受けて公取委の警告は、前例になく踏み込んだ内容となった。警察庁に対して、各都道府県警察が2005年度に実施する「放置駐車違反処理システム」の入札に当たって他のベンダーが不利にならないようにすることを要請したのだ。「標準仕様書案を公開し意見を求めるといった公平性に配慮した措置を自主的に講じる」という報告が警察庁からあったため、同庁に対してこの措置を確実に行うように要請した。公取委によれば「こういった要請を行うのははじめて」(同室)。

 松下電器は2000年4月(当時の社名は松下通信工業)にも、同社を含む大手ベンダー4社とともに安値入札に関連して公取委から口頭注意を受けている。郵政省(現在の日本郵政公社)の「郵便トータルネットワークシステム」の設計工程を17万円で落札したことが問題視された。ただし、公取委は「今回の警告は前回の口頭注意と関係ない」(同室)としている。

広岡 延隆=日経コンピュータ