「ERPパッケージ(統合業務パッケージ)の採用に消極的な中小企業は、まだ多い。新製品で、こうした企業への導入を促進したい」。デル エンタープライズ事業本部ソリューション本部の多田和之本部長は、SAPジャパンの中堅中小企業向けERPパッケージ「SAP Business One」をハードやサービスと組み合わせた「Dell SBO短期導入パッケージ」に関して、こう意気込みを語る。

 SAPジャパンが今年6月に出荷を開始したBusiness Oneは、中堅中小企業をターゲットにした製品(関連記事)。同社のERPパッケージ「R/3(現在の名称はmySAP ERP)」よりも価格を低く設定し、100%間接販売を採用した。デルは新規顧客の開拓に重点を置くパートナーである「セールス・サービス・パートナー(SSP)」の1社として、6月のBusiness One発表時点で名乗りを上げていた。

 デルが11月29日に発表したDell SBO短期導入パッケージは、このBusiness Oneに加えて、(1)開発用および本番用サーバー(Windows機)、ギガビット・イーサネット・スイッチ、テープ・ドライブなどのハードウエア、(2)業務改革のようなコンサルティングからシステム構築までを含む導入/サポート・サービス、を組み合わせたもの。

 価格は、基本モデルで1500万円から。ここにはBusiness Oneの10ユーザー分のライセンス(280万円)、ハードウエア費用、導入/1年分のサポート・サービス費用が含まれる。「コンサルティングやサポート料金込みであることを考えれば、この料金でも十分他社製品に比べて競争力はある」と多田本部長は話す。構築に要する期間は企業の規模や体制により異なるが、最短で2カ月程度になる見込み。

 基本モデルに加えて、金融・保険業に特化した「金融・保険業モデル」を同時に出荷する(料金は1980万円から)。金融・保険業モデルは、基本モデルに「個人顧客の管理」といったアドオン・ソフトを加えたもの。「保険の代理店などに向けて販売する。このほか、数多くの個人情報を管理しなければならない企業にも販売できると考えている」(多田本部長)。ちなみにBusiness Oneのアドオンは、SAPの独自言語であるABAPではなく、Visual BasicやJavaで開発できる。

 システム構築やサポートは、主にデルのパートナー企業が担当する。現時点での構築パートナーは、アイ・ティ・フロンティアやインテック、パーソナル情報システムなど7社。サポート・パートナーは、Business One専門のサポート会社であるSupport Oneが務める。「今後、パートナー企業を増やしていく。数を追求するのではなく、質の高いパートナーを選んでいきたい」(多田本部長)。

 デルはDell SBO短期導入パッケージの販売目標を明らかにしていないが、「今後3カ月でどれだけ顧客を獲得できるかが勝負だと思っている」と多田本部長は強調する。同氏によれば、すでに3社がデルのサーバー上でBusiness Oneを利用しており、現在は10社以上と商談を進めている。「金融・保険業モデルのような業種別モデルを、来年3月までに少なくともあと2種類出す予定。ビジネスは基本モデルよりも業種モデルのほうが主力になると見ている」(多田本部長)。

島田 優子=日経コンピュータ