「ブレードPCの採用でエアコンの設置費用20万~25万ドルを節約できた」。証券/銀行業務を手がけるドイツ系金融機関ウエストエルビーのシステムを担当するウエストエルビー・システムズ・ゲーエムベーハーのマーレー・テブス支店長 アジア・パシフィックIT本部長(写真)はこう証言する。東京・六本木ヒルズにあるウエストエルビーの東京支店は5月上旬、米クリアキューブのブレードPC100台弱を導入した。ブレードPCは、プロセサ、メモリー、ハードディスクなどの部品をブレード状のボードに搭載したものだ。ユーザーの手元にはブレードと接続する専用の接続装置と、キーボードやマウス、モニターを設置する。

 ブレードPCの採用の決め手になったのは、トレーディング・ルームの室温問題を解決できること。「我々が入居するフロアはトレーディング・ルームとして設計されたものではなかった。窓が大きく日光が射し込んで室温が高くなりがちで、通常のパソコンを配置すると相当の熱が発生すると予測された」とテブス氏は説明する。これを解消するためにエアコンを設置すれば、「20万~25万ドル(約2000万~2500万円)」がかかる。

 そこで、同社はブレードPCに目を付けた。トレーディング・ルーム内に設置するブレードPCの接続装置はほどんど熱を持たないからだ。「初期導入コストは普通のパソコンの2倍近くかかるが、追加のエアコンの設置費用と電気代が浮くことを考えれば、十分に元が取れると判断した」。

 熱問題以外にもブレードPCの導入メリットはあった。例えば、パソコンが故障した場合の復旧時間が短縮できた。「トレーダー業務は時間との戦い。端末の故障による仕事の中断は大きな問題だ。通常のパソコンだと復旧するのに30分から1時間程度はかかっていたが、ブレードPCにしてからは、故障したら数分で接続先を他のブレードに切り替えて業務が再開できるようになった」(テブス氏)。接続装置はファンレスなので、通常パソコンが稼働中に出るファンの騒音からも解放された。

 パソコンの盗難などに伴う情報漏洩リスクが低減できるというメリットも無視できない。データはトレーディング・ルームの専用端末には保存されず、マシン・ルームに設置したブレードPC側で集中管理する。

広岡 延隆=日経コンピュータ