「欧米でもERPパッケージ(統合業務パッケージ)の導入はうまくいっていない。ERPパッケージを導入して満足するのは、ほんの一握りの企業だけだ。たいていの企業は満足していないまま、利用しているのではないか」。豪ガートナー リサーチのリサーチ バイス プレジデントであるクリスティン・スティーンストラップ氏(写真)は、ERPパッケージの導入状況についてこう説明する。

 スティーンストラップ氏は、「ERPパッケージの導入がうまくいかない場合、多くの問題点はユーザー企業にある」と指摘する。十分に製品を理解しないままパッケージを決めてしまう、導入途中に要件を変更する、適正なコンサルタントを選択できていない、といったことが導入を難航させるのだという。「これは日本に限らずどの国のプロジェクトでも共通している」(同氏)。

 導入に失敗しないためには、ERPパッケージを選択する際に、「ベンダー戦略やサポート体制を見極めなければならない」とスティーンストラップ氏は話す。「ERPパッケージが自社に合うかどうかは、その産業に特有の機能を備えているかどうかに大きく左右される。ベンダーが、自社が該当する産業分野に力を入れているかどうかに注意すべきだ」(同氏)。

 ERPパッケージに付き物のカスタマイズについても、スティーンストラップ氏はこう指摘する。「カスタマイズしなければ、ERPパッケージを導入できない業務には二つの種類がある。汎用的なパッケージを選択すべきでない戦略的な業務か、本当は変更しなければならないのに変更できない効率の悪い業務かのどちらかだ。前者の場合はERPパッケージを導入すべきではない。後者の場合は業務を変更するために、ERPパッケージをアドオンやカスタマイズなしで導入した方がよい」。

 ベンダーのサポート体制を評価するうえでは、導入時のサポートはもちろん、「導入する製品が買収された際のことを想定するべきだ」(スティーンストラップ氏)という。ERPパッケージ・ベンダーは合併や買収が頻繁に起こっている。スティーンストラップ氏は、「自社が導入するERPパッケージ・ベンダーが買収された場合、重要なのは製品が生き残ることだ。ERPパッケージを導入する際は、パッケージ・ベンダーが買収された場合のことも想定して契約を結ぶべきである」と強調する。

(島田 優子=日経コンピュータ)