コンサルティング会社大手のアビームコンサルティングは11月16日、NECと資本提携を結び傘下に入った。NECは約100億円でアビームの35%の株式を取得する。2004年度末までに約60億円(本誌推定)を追加投資し、出資比率を50%まで引き上げる。段階的に出資比率を高め、2010年までにNECの100%子会社にする計画だ。

 NECの金杉明信社長(写真右)はアビームへの出資理由を、「アジアを起点としたソリューション事業を拡大する点で両者の利害が一致した」と説明する。アビームが中国などアジア8カ国に14拠点を構えている点やインドにオフショア開発要員として約4000人の人材を確保している点を評価した。NECはかねてからグローバル展開の一環としてアジア地域におけるSIビジネスを拡大する方針を打ち出していた。

 アビームの西岡一正社長(写真左)は、経営不振説を一蹴した上で、「今後のシナリオとして、現状維持、IPO(新規株式公開)、他社との戦略的提携の3つがあった。成長スピードを重視する上では、今回の提携が最も適切だと判断した」と説明する。「財務基盤を強化することで、成長のスピードはさらに加速する。5年後の2010年には、社員数1万人(現在2000人)、売上高1000億円(2003年度は332億円)にしたい」と強気の姿勢を貫く。

 NECへの傘下入り後も、アビームは現体制を維持する。社名や役員は変更しない。NECの金杉社長は「吸収合併ではなく、コンサルティング会社の独立性を保ったまま、両者の相乗効果を出そうとしている点では他社の戦略とは異なる」とする。PwCコンサルティングを事実上、吸収した日本IBMを意識した発言だ。アビームの西岡社長は、金杉社長の言葉を受け、「NECのハードウエア/ソフトウエアの販売に協力はしたいが、あくまでも顧客の選択を優先する。他社のハード/ソフトを使うことも十分にあり得る」と発言した。

目次 康男=日経コンピュータ