「社員がウイルスに感染したパソコンをLANにつないで、社内にウイルスがまん延してしまう問題は日本だけの話ではない。世界中で検疫ネットワークの重要性が増している」。こう語るのは、モバイル機器向けのローミング・ソフトを開発・販売するスウェーデンのアイピーアンプラグドのラース・セデガードCEO(最高経営責任者)。

 検疫ネットワークとは、ユーザーがパソコンを社内ネットワークに接続した時点で、セキュリティ上の問題を検知する機能。ウイルスに感染しているパソコンの通信を拒否したり、最新のセキュリティ・パッチを適用していない、あるいはウイルス対策ソフトのパターン・ファイルが最新でないといったパソコンを論理的に隔離し、最新の状況にした後で社内ネットワークに接続させる。

 同社は、日本システムディベロップメント(NSD)やNECシステム建設と共同で検疫ネットワーク・システム「Secure Mobile Platform」を開発し、11月2日に発表した。特徴は検疫機能とVPN(実質的な専用線網)機能、ローミング機能を併せ持つこと。システムはゲートウエイ装置、管理ソフト、クライアント・ソフトからなる。

 アイピーアンプラグドはこの製品にVPN技術とローミング技術を提供した。同社のモバイル機器向けのVPN製品は、すでに欧州企業を中心に実績がある。セデガードCEOは「今回新たに検疫機能が加わったことでより市場が広がる。世界中の企業に売り込んで行きたい」と意気込みを語る。

 Secure Mobile Platformを使うことで、社員は外出先からVPN経由で安全に企業システムを利用できる。加えて、検疫機能を利用することで、社外で使ったノート・パソコンから社内LANへのウイルスの持ち込みを防止できる。ウイルス対策ソフトとしては、米マカフィーと米シマンテックの製品が利用可能。NSDの小松昭隆ソリューション本部1部部長は、「今後、利用できるウイルス対策ソフトを増やしていく」と言う。

 ローミング機能もこの製品の大きな特徴である。外出先や家庭で使ったノート・パソコンを社内に持ち込む場合、設定を変えずに社内ネットワークに接続できる。PHSで社内ネットワークに接続していた社員が社内に戻って無線LANに切り替えたり、無線LANで接続していた社員が有線LANに接続し直した場合でも、ネットワークの違いを意識することなく通信を継続できる。

 NSDの小松部長は「当社の営業担当者もノート・パソコンを持って飛び回っている。まずは自社のセキュリティを高めるためにSecure Mobile Platformを開発した。自分たち自身がファースト・ユーザーとなって作ったので自信がある」と語る。

鈴木 孝知=日経コンピュータ