「年々増える利用者で、Webサイトはパンク寸前。営利団体ではないのでシステム投資にも限界がある」--。渋滞情報を提供している日本道路交通情報センター(JARTIC)調査部の野田覚次長は、苦しい台所事情を説明する。現在、同センターがこの問題解決の手段として注目しているのがWebサービスだ。

 JARTICは、警察庁と国土交通省が、交通情報提供による渋滞の緩和を目指して設立した財団法人。テレビやラジオの「道路交通情報」で知られるが、最近、急に存在感を高めているのがWebサイト「道路交通情報Now !!」である。同サイトへの訪問者は年率2倍のペースで増加しており、今年8月には90万ページビューに達した。
 
 「可能な限り多くのユーザーに情報を提供して、出発時間の変更や混雑カ所の迂回を促す。渋滞の緩和に貢献することがJARTICに課された責務」(野田次長)。これまでにも、画像データの軽量化やCDN(コンテンツ・デリバリ・ネットワーク)サービスを利用するなど、さまざまな形でWebサイトのトラフィック増加対策に手を打ってきた。来年にはサーバー増強を予定しているものの、そう何度も大規模なシステム投資はできないのが実情だ。

 そこで、JARTICはWebサービスの利用を検討し始めた。現在は独自形式でカーナビに配信している道路交通情報を、XMLに変換してリアルタイムに配信する。大手ポータル・サイトに交通情報を提供することで、自らのサイトに集中しすぎた利用者を分散するのが狙いである。今年10月には、XMLコンソーシアムが実施したWebサービスによる渋滞情報配信の実証実験に参加した。

 実験では、JARTICが各都道府県から集めた交通情報と、他のコンテンツ・プロバイダから収集した地図、天気、宿泊/観光情報などをWebサービスで組み合わせ、観光プラン作成サイトを構築した(画面)。ユーザーが行き先を選んで観光プランを組み立てると、最新の渋滞状況を反映した所要時間を表示する。道路交通情報のデータは、カーナビ向けに独自形式で配信しているものをXMLに変換して提供した。

 サイト構築にはXMLの標準化団体であるOASISが策定した新規格「BPEL(Business Process Execution Language)」を採用した。Webサービス間を接続するインタフェースに標準規格を採用したことで、該当部分をJavaや.NETで個別に開発する必要がなくなった。開発期間は約1カ月と、従来の半分以下で済んだという。

 JARTICとXMLコンソーシアムは、来年3月から9月まで開催される愛知万博で来場者の反応を確かめた上で、実用化を検討していく。

本間 純=日経コンピュータ