「開発部門から品質の悪いアプリケーションを引き継ぐから、運用部門の担当者は後で大変な苦労を強いられる。運用部門の担当者は開発部門にアプリケーションを突き返すべきだ」。フジテレビジョンでシステム運用を統括する渡部郁夫情報システム局長は11月8日、東京で開かれた「Systems Management Forum 2004」の基調講演で、こう持論を展開した。

 渡部局長は「運用部門は独立した部門であって、開発部門に従属したものではない。稼働環境を正常に機能させるという運用部門の責任を果たすためにも、開発担当者にシステムを引き継ぐ際の条件を示すことが大事だ」と続ける。

 フジテレビでは1982年から、運用部門が開発部門に対して、「異常終了しないという条件を満たさない限り、運用部門はプログラムを受け入れない」という条件を提示。開発部門にこれを守るよう要請してきた。「異常終了しない品質の高いプログラムを開発するのは難しい。だが、安定的に運用できるようにするために重要なので提示している」(渡部局長)。

 実際に1982年からの3年間は、すべてのプログラムがこの条件をクリアしたわけではなかった。「異常終了したときは、開発部門の担当者がリカバリに当たった。運用側としては、異常終了したことを開発部門に知らせるが、その後のリカバリには一切関与しなかった」と渡部局長は当時の運用状況を語る。

 異例の条件を開発部門に提示したのには理由がある。フジテレビでは、できるだけ専門のスキルを持たない人間でも、システムを運用できるようにしなければならなかったからだ。異常終了したプログラムの復旧には、それなりの運用スキルが必要になる。

 実はフジテレビでは1982年から、システムを扱ったことがない中高年の社員がシステムを運用することになっていた。定年延長したことを受けての措置だった。業務経験のない担当者が、システムを運用できるようにする必要があった。このとき以来、フジテレビは自動運用体制の整備に取り組んできた。現在では経験がない担当者でもシステムを運用できる体制を確立している。

 渡部局長は「運用部門の要求を開発部門に守ってもらうことができたのは、異動してきた中高年社員を錦の御旗にできたことも大きかった」と説明する。運用部門に異動してきたメンバーのなかには、プロデューサーやカメラマンなど、テレビ局の現場で活躍した後、重要なポストに就いたベテラン社員だった。

(西村 崇=日経コンピュータ)