沖電気工業は11月9日、個人情報などの機密データを外部と安全にやり取りするためのソフト「eすぷりっと便」の出荷を開始した。eすぷりっと便は、任意のファイルを二つに分割し片方のファイルだけでは閲覧できないようにする。再度、ファイルを統合して閲覧できるようにするにはeすぷりっと便が必要になる。

 同社の竹内敏尚ネットビジネスソリューションカンパニー・プレジデントは、「片方をCD-Rに保存して郵送し、もう片方を電子メールで送るというように配送方法を変えたりすることで、配送時に情報が漏洩する危険性を減らすことが可能」と語る。分割した半分ずつのファイルが相互に残りのファイルを回復させる鍵の役割を果たすわけだ。

 竹内プレジデントは、この方式のメリットとして「ランニング・コストが不要」なことを挙げる。「情報漏洩対策として、暗号鍵を使ってデータを暗号化する方式を使うことが多い。だが、暗号鍵を使う方式だと、証明書を更新する費用などランニング・コストが必要だ」(同)という。

 同社は、印刷会社やコールセンター事業者などの委託業者へ個人情報を配送する場合など、他の企業と機密情報をやり取りする必要のある企業や、医療機関による電子カルテなど医療データの配送といった業務での利用を見込んでいる。

 eすぷりっと便のラインナップは2種類。一つはファイルの分割/復元に特化した「エントリーモデル」。もう一つは、分割したファイルを事前に指定したメール・アドレスやファイル・サーバーへ自動送信したり、配信履歴を管理する機能などを付与した「スタンダードモデル」である。

 「ユーザー企業には、毎月同じ会社に個人情報や社員情報を送信する定型業務がけっこうある。これらの業務を自動化して手作業を減らしたいという要望があったため、自動化機能を加えたスタンダードモデルを作った」(竹内プレジデント)とする。すでに、ISP(インターネット接続事業者)のソニーコミュニケーションネットワークが同ソフトを試験的に導入しており、12月から取引先企業へのデータ配送などに本格利用する。

 価格はエントリーモデルが50ユーザーの場合で250万円から。スタンダードモデルが100ユーザーの場合で650万円からとなっている。

(鈴木孝知=日経コンピュータ)