写真1◎北越銀行の小林氏(左)と樺澤氏

 新潟県中越地震の被災地の一つである長岡市に本店がある北越銀行は、システムのディザスタ・リカバリ(災害復旧)対策がほぼ完璧だった。事務統括部の小林洋一副部長(写真1左)は「被災した営業店もあったが、月曜日の朝からは営業店は通常通り業務を開始できた」とする。

 長岡市の北西、三島町にある同行のデータセンターは、免震構造になっていた。自家発電装置も備えていたこともあり、「建物や電力に関しては大丈夫だと信じていた」と事務統括部の樺澤隆一システム管理課長(写真1右)は語る。「今年7月に起きた台風災害の経験もあって、規定の復旧作業を素早く実施できた」と続ける。同行はデータセンターだけでなく、営業店にも自家発電装置を設置していたので、ATM(現金自動預け払い機)や営業店端末もほぼ問題なく動いた。

 ただし、災害が起きて初めて気付いたこともあった。それは湿度だ。データセンターは室内の温度と湿度を一定に保たねばならない。だが、「加湿するのに、1日1トンもの水が必要。貯水してはいたが、水道がいつ復旧するかわからない状況で早急な対策に迫られた」(樺澤課長)。

 小林副部長たちはすぐに、同行の災害対策本部に仮設トイレの調達を依頼した。水洗トイレで使う水を節約するためである。災害後、データセンターには、通常よりも多くの行員やインテグレータの担当者などが詰めており、水洗トイレで使う水の量が無視できない問題になっていた。

 樺澤課長は、「こればかりは想定外だった」と唸る(下の写真2参照)。普段であれば仮設トイレがすぐに手に入るだろうが、震災直後でどこも足りない状態。「なんとか調達できたときにはホッとした」と小林副部長は語る。「銀行の業務がストップすると、他の企業や個人のお客様にもご迷惑をかけ、復興の妨げになってしまう。そうした事態だけは避けられた」とする。

鈴木孝知=日経コンピュータ

*日経コンピュータの11月15日号では、北越銀行をはじめとする被災企業のシステム復旧状況をレポートします。

写真2◎北越銀行のデータセンター。左に仮設トイレが見える
写真2◎北越銀行のデータセンター。左に仮設トイレが見える