アイワイ(IY)バンク銀行は11月2日、2006年をメドに勘定系システムを刷新すると発表した。日経コンピュータで既報のとおり、日本ユニシスの大型IAサーバー「ES7000」とマイクロソフトのWindows Server Datacenter Editionを使う。システム開発は、勘定系パッケージ「BANKSTAR」を提供する日本ユニシスが手がける。プロジェクト全体の取りまとめは、野村総合研究所が担当する。

 勘定系をWindowsで刷新する狙いは、「顧客のニーズに応じて迅速に新商品やサービスを提供できるようにすることと、システム維持コストの削減」(IYバンク銀行企画部広報担当)。2001年5月に開業したIYバンク銀行は現在、日立製作所製メインフレームで勘定系システムを動かしており、保守効率の面で難があった。維持費用の負担も大きかった。

 メインフレームで動く勘定系システムをWindowsに置き換える決断を下したのは、昨年12月の百五銀行(三重県)に続きIYバンク銀行が2行目。百五銀行の稼働時期は2007年5月なので、「国内ベンダーの開発したWindows勘定系としては、IYバンク銀行が第1号となる」(日本ユニシス)。

 新システムは、OSがWindows、データベースがSQL Server、ミドルウエアが日本ユニシスの「MIDMOST」といった具合にオープン系ソフトウエアを採用。年間維持コストの2~3割削減を狙う。稼働時期は現行システムのリース満了に合わせて2006年とした。システム刷新費用は非公表だが、日経コンピュータの推定で30億円前後。

 高い信頼性や可用性が要求される勘定系システムにWindowsを適用することに対しては、否定的な見方が少なくない。これに対して日本ユニシスの島田精一社長は、「Windowsの稼働で実績のあるES7000と、金融機関のシステムですでに使われているソフト製品を使うことで、要件を満たすシステムを十分構築できる。当社が責任を持つ」と断言する。

 IYバンク銀行は、勘定系システムの再構築と併せて、全銀システムや統合ATM(現金自動預け払い機)といった社外システムと勘定系の接続を担う「対外系システム」、提携金融機関やATMと勘定系システムをつなぐ「中継システム」といった周辺システムも刷新・手直しを行う予定。システム開発は、日本ユニシスと野村総合研究所が実施する。

 IYバンク銀行は、IYグループのイトーヨーカ堂やセブン-イレブン・ジャパンが展開する店舗を中心に、全国23都道府県で9552台(今年11月1日現在)のATMを設置している。ATMの利用顧客や提携金融機関309社(2004年3月末現在)からの手数料を主な収益源とする同行の戦略は、ATM1台の1日当たり平均利用件数が68件を達成した開業3年目の2003年度に結実。経常収益が291億円で経常利益は30億円と、初の黒字を確保した。事業拡大に伴い、2003年度は111億円(ATMのリース費用を含む)のシステム投資を行った。

 2004年度も引き続き好調だ。今年10月に発表した業績予想によれば、来年3月末にはATMを1万100台と大台に乗せ、1台の利用件数は1日75件に跳ね上がる。2004年度の経常利益は87億円を見込む。ビジネスの伸びは、もはやIYバンク銀行自身の予測すら上回っている。今年5月に発表した業績予想を、今年10月には上方修正した。

大和田 尚孝=日経コンピュータ