携帯電話向けコンテンツ配信事業者のコネクトテクノロジーズサイバードドワンゴが、配信サーバー・システムの標準化を進めている。

 大手ゲーム会社からドワンゴに転じた岡本征史氏(第一研究開発部部長)は、その狙いを「技術的障害を取り除き、業界に新規参入企業を呼び込むこと」と語る。コンテンツ配信分野では業者間の生存競争が激化しているにもかかわらず、あえてライバルを呼び込む理由は何か。同氏に話を聞いた。

--配信サーバー・システム標準化の現状は。

 我々3社は「Mobile COSMO」の名で、サーバー配信システムのハード/ソフトについて標準化を進めている。今年8月に携帯関連のコンファレンス「mobidec 2004」で正式に活動開始を発表した。現在はモバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)の中で、参加企業を募っている段階だ。

 Mobile COSMOでは、配信規模に応じたサーバーの処理能力やネットワーク要件、連続稼働に必要な稼働要件などを定義する。サーバー・アプリケーションについては、データベースへのアクセス、ログ解析、会員IDの取り扱いなどのインタフェース仕様(API)を定める。仕様は段階を経て、なるべくオーブンにしていく。

 業界への新規参入を促進するためには、まずその仕組みづくりが必要になる。現在の携帯向けコンテンツは、各社各様のシステムから配信されている。これと同様のものを、新規参入事業者が構築するのは困難だ。Mobile COSMOを策定するのは、こうした技術的ハードルを取り除くことが狙いだ。

 配信システムとコンテンツが標準的なインタフェースで分離されれば、コンテンツ制作と配信の分業が可能になる。新規参入の企業がサーバー運営を他社に任せ、コンテンツ制作に集中することも容易になるだろう。

--なぜ、あえてライバルを招き入れるようなことをするのか。

 当社も含めて、コンテンツ制作を手がける開発者のアイデアが枯渇しつつある。着メロや占いなど、一部の人気カテゴリに収益を頼る構図が変わらず、このままではやがてユーザーに飽きられてしまう。携帯電話自体の機能進化は進んでいるが、作り手側はそれに十分追いついていないのが現状だ

 コンテンツに新規性が乏しいから、人気キャラクタに頼る傾向も依然根強い。このままいくと、我々がキャラクタの権利を持つ企業の単なる下請けになるかもしれない。

 この業界に今必要なのは新規参入企業だ。ざん新なアイデアを持ち込んでもらい、新たなカテゴリのコンテンツを開拓してほしい。あえてライバルを招き入れ市場を拡大しない限り、我々の未来はないと考えている。一部の事業者が少ないパイを分け合っているままではだめだ。

 当初はゲーム、音楽といった比較的近い業界からの参入が中心になるだろう。期待しているのは、いわゆる「コンテンツ」だけではない。既にいくつかの警備保障会社が携帯電話向けの緊急通報サービスを提供しているように、消費者向けビジネスを展開する異業種企業がさまざまなビジネス・モデルを持ち込めるようにしたい。

 これまで携帯電話向けのビジネスに興味があっても乗り出せなかった企業が、我々の仲間になってくれることを願う。

本間 純=日経コンピュータ