住友信託銀行は今年9月、国内為替を処理する市場系システムを刷新した。為替業務にかかわる顧客サービスの強化が狙い。海外で実績のある為替処理パッケージを使うことで、構築費用を自社開発の半分以下(本誌推定)に抑えた。具体的な構築費用は非公表。

 新システムで採用したパッケージは米カリプソ テクノロジーの「Calypso FX」。カリプソのアーニー・パップ代表取締役によれば、「日本での導入は住友信託銀行が初めて」だという。日本の金融機関は「ほとんどがパッケージを使わず自社開発している」(パップ代表取締役)。

 住友信託銀行も従来はIBM製メインフレームで自社開発アプリケーションを動かしていたが、「顧客のニーズや社会の変化に合わせてシステムを素早く修整するため、パッケージの採用を決めた」(業務管理部の中井準主任調査役)。

 海外製パッケージを使う場合、「信託為替」や「為替の頭押さえ・足決め」といった日本独自の要件をどう実現するかが問題になる。今回は、住友信託銀行がカリプソと共同で日本独自機能をCalypso FXに盛り込んだ。住友信託銀行はノウハウをカリプソへ提供する代わりに安価に導入できた。

 住友信託銀行は、すでに社内部門で新システムを使い始めている。来年初めには、新システムを使って法人顧客向けの新サービスを提供する見込み。来年半ば以降にデリバティブ(金融派生商品)関連の機能を盛り込む。将来は海外の為替システムの統合も視野に入れる。

 新システムの開発プロジェクトは、住友信託銀行とカリプソ、三井情報開発で実施。「通常は2年以上かかる規模だが、ほぼ1年で完成させた」(パップ代表取締役)。ハードウエアは日本IBMのUNIXサーバー「pSeries」、OSはAIXを採用した。

大和田 尚孝=日経コンピュータ