「以前はKDDIグループへの遠慮があった。これからは積極策に打って出る」。DDIポケットの山下孟男社長は怪気炎を上げる。KDDIの傘下にあった同社は、米投資会社のカーライル・グループと京セラに買収され、10月1日に新会社として発足。10月14日には、社名を2005年2月1日に「ウィルコム」に変更すると発表した。

 DDIポケットは現在、PHSを使った定額データ通信サービス「AirH"」を提供している。だが、KDDIの第3世代携帯電話サービス「CDMA 1X」との兼ね合いから、「低速で低料金」という位置づけに甘んじている。音声サービスについても携帯電話サービスへの配慮から、縮小傾向にある。

 しかし社名変更を機に、これまでの戦略を転換する。まず、PHSを使ったデータ通信サービスの高速化に着手する。まず、データ圧縮用システムを刷新し、現行2倍の圧縮率を4~10倍に向上させる。さらに、全国に設置している基地局のアンテナを、東京から順次高性能なものに入れ替えるとともに、今年度中にデータ通信カードの新製品を投入し、最高256kビット/秒のサービスを開始する。

 最高256kビット/秒というのは、現行サービスの2倍の速度にあたる。これにデータ圧縮機能を併用することで、「Webアクセスとメールに限り、1Mビット/秒程度の感覚で利用できるようになる」と、喜久川政樹 経営企画本部長は説明する。時期は未定だが、最高512kビット/秒のサービスを提供する予定であることも明らかにした。

 これまで積極的ではなかった音声サービスにも力を入れる。現在、通話可能な端末は4機種しかないが、新機種を投入していく。加えて、これまで他社の回線交換網を利用していたバックボーンをIP化してコストを下げ、競争力を高める。「PHSは携帯電話に比べて電磁波による医療機器などへの影響が小さい。ニーズは必ずある」と、木下龍一会長は自信を見せる。

 DDIポケット(ウィルコム)は、今後5年間で約700億円を投資する予定である。喜久川本部長は「5000億円から1兆円もの投資をする携帯電話事業者とは違い、少ない投資でサービスを大幅に強化できる」と優位性を強調する。

福田 崇男=日経コンピュータ