「情報システムやソフトウエアに関連する訴訟の数は確実に増加している。西暦2000年問題の影響を受けた2001年度は特別に多かったが、この年を除いても増加傾向に変わりはない。最近では東京地裁だけでも年間に20件を超す訴訟が起きている」。

 こう話すのは、東京地方裁判所でコンピュータ専門の民事調停委員を務める保科好信氏。調停委員が独自に調査した結果、このような事実が明らかになった。同氏によれば、訴訟が増えている原因は次のようなものだ。

 第一に、インターネットの普及などもあって、システムの再構築の機会が増えてきたこと。さらにゲームやモバイル関連を含めて、以前に比べると情報化のすそ野が広がってきたことも影響している。

 またアウトソーシングやERPパッケージ(統合業務パッケージ)のような、新しい技術の導入によって情報システム部門の役割が変わってきており、外部のベンダーに依存する割合が高まっていることも訴訟が増える一因だ。社内ですべてを開発している場合には、トラブルを解決するために裁判に訴えようにも、訴える相手がいないからだ。

 同氏の経験によれば、システム・トラブルが訴訟になる場合、原因は納期の遅れや仕様の追加変更の扱い、システムの品質に対する不満、契約の不備の3点であることが多い。こういったトラブルを避けるためには、きちんとした契約書の作成、関係者への契約内容の周知徹底、しっかりした開発の工程管理の実施、保守・運用体制の整備などが有効であるという。

(中村 建助=日経コンピュータ)