システム・インテグレータのシーイーシーは10月5日、米RelexUSが開発・販売する組み込み向けリレーショナル・データベース(RDB)「Linter」の販売を開始する。Linterはロシアでエンタープライズ向けRDBとして開発され、カーナビゲーション・システムや携帯電話、DVDレコーダなどに組み込んで利用できるよう米国で改良された製品。「組み込みRDB製品のデファクト・スタンダードを狙う」と、シーイーシーの橋村清海 取締役デジタル機器システム本部本部長は意気込む。

 Linterは、メモリーの少ない機器で高速かつ容易に利用できることを狙ったRDB。独自技術を採用し、少ないメモリー容量でフェッチ(レコードからデータの値を取り出す)や、ソート、ジョイン、グルーピングなどのデータベース処理を高速化しているという。稼働時のメモリー使用量(フットプリント)は、通常版のLinter Embeddedで最小800Kバイト。携帯電話などメモリー制限の厳しい機器向けのLinter Microは、最小40Kバイトで動作する。

 「組み込み用途のRDBには、IBMのDB2 Everyplaceなど約4製品があるが、まだ小さな機器で本採用された例はないと認識している。ソフトの規模が大きくて組み込みにくいうえ、レスポンスも遅いからだ。ソフトの規模とスピードのどちらをみても、Linterに匹敵する製品はないと考えている」と橋村取締役は話す。WindowsやUNIXなどの主要OSに加えて、Symbian OSや組み込みLinuxなどで利用できる。RelexUSのアナトール・ペチコフ社長は、「インストールが容易で、5、6分あればセットアップは終了する」と使い勝手のよさを強調する。

 Linter Embeddedはストアド・プロシジャやトリガー、レプリケーション、オンライン・バックアップなど、エンタープライズ向けRDBが持つ機能と同等のものを備える。SQLのほか、ODBCやJDBCなどを利用できる。突然の電源断が発生した場合に自動復旧することも可能。Linter MicroはSQLを部分的に利用でき、CまたはC++でアプリケーションを開発できる。価格は、開発環境込みのライセンス価格が78万円。実行ライセンスは用途や量に応じて異なる。

 日本および中国、台湾、韓国における、LinterをはじめとするRelexUS製品の総代理店はシステム・インテグレータのブライセンが担当している。シーイーシーはブライセンと共同でLinterの販売活動を進める。販売目標は3年でシーイーシー、ブライセンがそれぞれ25億円ずつの計50億円。日本だけでなく、アジアでの販売活動も展開していく。

 「カーナビやケータイなどのデジタル・アプライアンスは、メモリーやハードディスクの大容量化に加えて、Bluetoothなどの無線技術が普及することで、大量のデータを扱う必要が生じている。しかも、デジタル機器ではソフト開発の割合が大きくなる一方。多くのデータを扱い、かつソフト開発生産性を向上させるためにデータベースの使用は不可欠」と橋村取締役は主張する。ブライセンの藤木優 社長兼CEO(最高経営責任者)は、「メーカーは問題意識が高く、すでに需要は高まっている。2005年度からは、組み込みRDBを搭載した機器が数多く登場するはず」とみる。

田中 淳=日経コンピュータ