セキュリティ対策を強化したWindowsXP Service Pack 2(SP2)では、Outlook ExpressにWebバグをブロックする機能が実装された。Webバグ(Webビーコン)とは、HTML形式の電子メールやWebページに忍ばせる、目に見えないほど小さな画像ファイル。スパム・メールに埋め込まれることが多く、プライバシの侵害につながりかねないとの見方が強い。SP2にブロック機能が実装されたのもプライバシ保護のためだ。

 しかし、こうした動きに反発する声もある。オンライン広告大手の米ダブルクリックは、電子メールやWebを使った企業のマーケティングを支援する立場から、Webビーコンの重要性を訴える。同社のCPO(最高プライバシ責任者)を務めるベニー・スミス氏に話を聞いた。

--SP2がブロック機能を搭載するなど、Webバグへの風当たりが強いことをどう思うか。

 まず、Webバグという呼び方についてだが…。我々はWebビーコンという言葉を使っているし、将来もそうすべきだと思っている。「バグ」という言葉の裏には、この技術の悪い面だけを強調する意図がみえる。

 Webビーコンは、そもそもオンライン・マーケティングのために開発された。今でも、企業のマーケティング活動にとっては重要な技術だ。電子メールにサーバーの極小画像を参照するHTMLを埋め込むことで、開封確認ができるだけでなく、その後顧客がアクセスしたWebサイトでトラッキングができる。Webサーバーのログを基に、電子商取引の購買率向上などに役立つデータを収集できる。

 物事には、必ず良い面と悪い面がある。Webビーコンそのものは悪者ではない。米マイクロソフトが一方的にWebビーコンを締め出す決定をしたことは非常に残念に思っている。

 Webビーコンのような技術を正しく使うには、オンライン・マーケティングを手がける企業各社が、それぞれの顧客に対して誠実に対応することだ。我々が設立したNAI(Network Advertising Initiative)は、「Notice & Choice」という原則を掲げている。消費者に何も隠さないこと、そして回避手段を提供することが重要だ。

 ダブルクリックは設立以来、Cookieによる個人情報収集などの問題でたび重なる批判を受けてきた。そのたびに、包み隠さず正直に情報を公開し、明確なポリシーを示すことで、顧客企業と消費者の信頼を保つことができた。この経験を生かして、業界全体の意識向上を図っていきたい。

--Webビーコンはスパム・メールに使われる点で問題視されているが。

 それはWebビーコンではなく、スパム・メールが横行していることに問題がある。Webビーコンをブロックするのではなく、スパム・メールそのものを排除することを考えるべきだろう。

 その点は我々も努力している。オンライン・マーケティングにとって、スパム・メールは大敵だからだ。我々の顧客企業、例えば米ユニリーバなどの大衆消費財メーカーが顧客向けに発行している合法的な電子メールはスパムの中に埋没しており、開封率は落ちる一方だ。

 昨年9月と今年7月、我々は電子メール・マーケティングを手がける約20社の大手企業と、AOL、マイクロソフト、ヤフー、それに主要なISPを招いて「反スパムサミット」を開催した(関連サイト)。各社と密接に情報交換しながら、スパム対策技術の標準化に力を入れている。

 昨年12月に米政府で反スパム法が成立したのを契機に、スパム業者に対する包囲網は着実に狭まりつつある。今年7月にマイクロソフトがスパム業者に勝訴したのは良い例だ。まだ取り組みは始まったばかりだが、私は先行きを非常に楽観的に捉えている。

本間 純=日経コンピュータ