東京三菱銀行は10月12日から、バイオメトリクス認証(生体認証)に対応したATM(現金自動預け払い機)を全店舗で稼働する。相次ぐなりすましの被害に対応して、生体データの登録を条件に、最大1億円の損害補償を提供する。認証方式には手のひらの静脈パターンを読み取る方式を採用した。さらに来年秋に、NTTドコモのFeliCa搭載携帯電話「おサイフケータイ」でATMから現金を引き出せるようにする。

 新型ATMの導入は、キャッシュカード/クレジットカード/電子マネーの機能を持った多目的ICカード「スーパーICカード『東京三菱-VISA』」の発行開始に合わせたもの。同行は年間100万枚の新規発行を見込んでいる。これに合わせて、全国約220の店舗で同カード対応のATMを稼働する。来年中には、無人のATMコーナーを含むほとんどの拠点に新型ATMを設置する。

 ATMは日立製作所製で、富士通の非接触型手のひら静脈認証装置を備えている。画面横のセンサー部分に手のひらをかざすと、静脈のパターンを赤外線で読み取ってICカード内のデータと照合し、本人確認する。この技術の採用にあたっては、約半年間、店頭デモやアンケートでユーザーの声を集め、指紋認証と比較した。手のひら静脈認証を採用したのは「バイオセキュリティ預金」を展開するスルガ銀行に続いて2例目である。

 ICカードはソニー製で、接触型/非接触型のデュアル・インタフェースを備えている。電子マネー「Edy」を利用できる(ただし当面、ATMでのチャージはできない)。スキミング防止の目的で磁気ストライプを備えていないため、従来のATMでは利用できない。

 同行は、まず高額所得者など「ゴールドプレミアム」会員向けにこのICカードを発行する。来春までに、ゴールドカード、一般カードも発行する計画である。バイオメトリクス認証を通常のキャッシュカードに採用することも検討している。

 来年秋からはFeliCa搭載携帯電話でATMから現金が引き出せるようにする。これに先立ち、11月から東京・丸の内などで協力企業の社員数百人を対象に試験サービスを実施する予定である。万が一、ユーザーが携帯電話を紛失した際は、キャッシュカードを紛失した時と同様に、銀行に連絡して利用停止する。携帯電話のパスワード・ロックを有効にすれば、通常のキャッシュカードより安全性が高まるという。

本間 純=日経コンピュータ