「開発工数を小さく見積もるプロジェクト・マネジャが多すぎる」。日本IBMで数々の大型プロジェクトを指揮し、現在はプロジェクト・マネジャを育成するPMリサーチの代表取締役でもある岡村正司氏は、このように警鐘を鳴らす。

 開発規模が増加すると、要件の調整やテストに時間がかかるために開発生産性が低下することはよく知られている。しかし、実際にはきちんと考慮せず、過小見積もりをするプロジェクト・マネジャが多い。「問題プロジェクトのレビューを依頼されて見にいくと、こういうケースによく遭遇する」(岡村氏)。

 例えば、大型プロジェクトで複数の協力会社(ソフトハウス)に発注しようとしたときに、ソフトハウスのプロジェクト・マネジャが過小見積もりをすることが非常に多いという。全体の規模がわかっていても、自分の担当する中小規模のシステムだけを考えて見積もるからだ。想定の半額程度で請負契約の案件を見積もることもあるという。インテグレータがそのまま発注すると、協力会社が破綻してプロジェクトが頓挫することになる。岡村氏は「過小に見積もってきた場合、協力会社が破綻しないように発注金額を増額し適正水準にする」という。

 過小見積もりが頻繁に発生する背景には、大型プロジェクトが少なくなってきたことがあると岡村氏は指摘する。開発規模によって開発生産性が大きく変わることをプロジェクト・マネジャが実体験したり、実例を分析する機会が減っている。このためユーザーもベンダーも開発規模と開発生産性の関係を考慮しないまま、工数を過小見積りしてしまうケースが増えている。「若手のプロジェクト・マネジャを計画的に大型プロジェクトに投入して育成することが必要になった」と岡村氏は主張する。

(安保 秀雄=日経コンピュータ)