「一般に旅行業は利益率が低いといわれる。社員一人当たりの売上高が業界トップの当社でも、約3800億円の総売り上げに対し利益は数億円。システムを刷新して業務の効率化を図り、旅行業は儲からないという神話を崩す」。旅行大手の阪急交通社の中路間茂樹 日本営業本部FIT営業部長は9月15日、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が開催した「HP Integrity Technology Forum 2004 Autumn」の講演でこう語った。

 阪急交通社は現在、旅行業務における基幹システム刷新プロジェクトを進めている。「HBOS(阪急ビジネス・オプティマイゼーション・システム)」と名づけた新システムは、予約管理業務や精算業務など一連の旅行業務を支援するもの。これまでは業務ごとにバラバラにシステムを構築・運用しており、業務フローも非効率な部分があった。そこで、業務フローの見直しとシステム刷新を決断。「過去のやり方にとらわれず、低コストで高品質なサービスを提供できるようにする」(中路間部長)という。ハード面では、合計13台のサーバーを日本HP製Itanium2サーバー5台に統合する。2004年中にほとんどの開発を終え、2005年初めにも稼働を開始する予定だ。

 業務フローの見直しの一環で、体制面も大きく変更する。全国の十数カ所のセンターで実施していた、渡航手続きや書類の発送業務を全国2カ所に集約する。これにより、4億円の運用コストを削減できるという。「センターを統合することで、将来的にアウトソーシングすることも可能になる」(中路間部長)。コールセンターも見直し、即時応答率を90%に高める。「過去15年間、電話がかかりにくいというのが常に最大のクレームだった。長年の懸案事項を解決する」(中路間部長)。このほかCRM(顧客関係管理)システムも充実させる。

 セキュリティ強化にも注力する。「当社は今年、62万人の顧客情報を漏洩させてしまった。この事態を厳粛に受け止め、2度と起こらないようにしなくてはいけない」と中路間部長は語った。

矢口 竜太郎=日経コンピュータ