「ユーザー企業がオフショア・ベンダーをシステムの運用・保守などの業務全体で利用するケースが増えている」。オフショア開発を請け負うインド系ITベンダーであるアイゲート グローバル ソリューションズのナビーン M.V.ジャパン リージョン代表は語る。「特にインフラ管理をオフショア・ベンダーにアウトソーシングすることはユーザー企業にとってメリットが大きい」とする。

 その理由は、「日本語を必要としない技術的な作業が多いからだ」(ナビーン代表)。従来のオフショアと言えば、アプリケーション開発を請け負う「オフショア開発」が一般的だった。日本人同士が同じ事務所で作業したとしても、失敗することが多いシステム開発。海外ベンダーとの共同作業となれば言語や距離、時差などリスクは増える。だが、インフラ管理であれば、「優れた技術力というインド・ベンダーの強みを最大限に生かせる」(同氏)というわけだ。

 アイゲートが力を入れている運用・保守業務は他にもある。アプリケーションの継続的な保守を請け負う「アプリケーション メンテナンス」だ。数人の日本側の担当者をユーザー企業に常駐させておき、開発作業だけをインドの技術者に任せる。

 オフショア開発の場合はプロジェクト単位で請け負い、日本にはプロジェクト・マネジャとプロジェクト・リーダーしか置かないという場合が多い。アイゲートも開発を請け負う場合は日本における要員を最小限に抑えた体制をとる。だが、村瀬将思(まさし)営業部課長は「小規模開発を散発的に実施する保守の場合は、十分な数の技術者が常駐しないとうまくいかない」と語る。

 また村瀬課長はアプリケーション メンテナンスの強みとして、「システム運用にかかわる業務改革を推進できる」ことを挙げる。「アイゲートだと、“インドの会社”、“オフショア”という物珍しさのせいか、多くのユーザー企業でCIOやシステム部門長が自ら出てきて提案を聞いてくれる。運用業務のやり方を変える場合には、トップに話を持っていくことが重要になる」という。

 こうした運用・保守業務をオフショア化するという流れは日本だけに限ったことではない。オフショア・ベンダーの利用が進んでいる米国では、企業の財務会計や人事といったバックオフィス業務をまるごと海外ベンダーに委託する「オフショア・アウトソーシング」が増えている。

鈴木 孝知=日経コンピュータ