「800MHz帯での携帯電話事業に参入する。総務省には先ほど、その旨を表明してきた」。ソフトバンクBBは9月6日、総務省の「800MHz帯におけるIMT-2000周波数の割当方針案」に対する意見書をまとめ、提出。その内容を報告する記者会見を開いた。孫 正義社長は会見で、今の電波行政のあり方を批判すると同時に、改めて携帯電話事業参入の意欲を語った。

 800MHz帯におけるIMT-2000周波数の割当方針案は、第2世代携帯電話(PDC方式)や空港無線電話で利用している800MHz帯の周波数を再編し、新たに第3世代携帯電話(IMT-2000方式)に割り当てるというもの。総務省が今年8月6日に公表し、9月6日を締め切りとしてパブリック・コメントを求めていた。

 ソフトバンクBBの意見書の内容は3項目ある。(1)電波行政の役割を公平かつ忠実に実行するよう総務省に求めること、(2)800MHz帯の再編を既存の携帯電話事業者だけで行う点に反対すること、(3)ソフトバンクBBが同周波数帯での事業に参入する旨を表明することである。

 同社は今年3月、2GHz帯での携帯電話事業参入を総務省に却下された苦い経験がある。これは、2GHz帯はNTTドコモ、KDDI、ボーダフォンの3社の第3世代携帯電話に割り当てる方針があったため。今回の800MHz帯の再割当方針案では、これに加えて、800MHz帯をNTTドコモとKDDIの第3世代携帯電話向けに割り当て直すことになっている。

 これに対して孫社長は、電波行政の不公平さを訴えた。既存の事業者がすでに十分な周波数割り当てを受けているからだ。孫社長は、「NTTドコモは、すでに新規加入の募集を停止した1.5GHz帯の周波数を利用できるはず。800MHz帯ではIMT-2000のサービスはまだ提供していない。一方、KDDIはIMT-2000のサービスを800MHz帯で提供しており、2GHz帯は十分に使っていない。こうした状況で、800MHz帯の再割り当ての対象をNTTドコモとKDDIの2社に限るのはおかしい」と主張。「既存事業者には2GHz帯などを優先的に使わせ、その分、800MHz帯の再割り当ては新規参入事業者も対象にすべき」とした。

 さらに、パブリック・コメントの募集が広く周知されていなかった点や、方針案に再割り当ての対象がNTTドコモとKDDIの2社であることが分かりやすく記述されていない点などを指摘。透明性のあるプロセスでの方針作成を求めた。

 同社は、IMT-2000の方式として、TD-CDMAとCDMA2000 1xの両方式での実験を展開。CDMA2000 1xについてはすぐにでもサービスを始められるという。孫社長は、「免許が下りれば、即座に設備投資できる状況。そこから1年半~2年半のうちにはサービスを始められる。あとは電波だけ」とすでに事業化の準備が整っている点を強調する。

 総務省は、ソフトバンクBBの意見書をはじめとするパブリック・コメントを受けて、方針を練り直し、10月初旬にも正式な方針を打ち出す。孫社長は、「方針決定までにはまだ時間が残されている。やれることはできる限りやる」と強気な姿勢を崩さない。

河井 保博=日経コンピュータ