「米国企業のCEOの多くはCIOをビジネス・パートナーと思っていない。システムの構築や運用を任せる事務的なリーダーとしか見ていない。このような状況では、企業競争力強化につながるIT戦略は実践できないし、CIOの存在価値がなくなってしまう」。米ガートナーのリサーチ・ディレクターであるデーブ・アロン氏は警鐘を鳴らす。同社が今年実施したCEO(最高経営責任者)やCIO(最高情報責任者)の意識調査結果に基づく発言だ。

 この調査では、CIOの約8割が「自分はCEOから信頼されている。ビジネスを変革するリーダー的役割を果たしている」と回答したのに対し、「IT戦略やCIOの役割はビジネスを進める上で重要」と答えたCEOは4割に達しなかった。「『CIOは事務的な役割』と答えるCEOも少なくない。CIOとCEOの意識の差が大きすぎる。CIOはもっと経営に参画し、このギャップを埋めるべき」とアロン氏は指摘する。

 だが、意識のギャップを埋めるのは、そう簡単なことではない。アロン氏は、「CIOが自分自身を正当化するのを止め、明らかにギャップがあることを認識することが第一歩。そして、CEOの視点や考え方を徐々に理解していけばよい」と助言する。

 この調査によると、CEOとCIOの考え方や性格にも明らか違いが出た。CEOは現在ではなく将来の姿を重要視し、規模拡大はもちろんのことM&A(企業の買収・合併)や提携など広い視点で企業の戦略を考えている。一方、CIOは将来よりも現在の姿を重要視し、セキュリティやコストといった狭い視点で戦略を考える。性格面でもCEOは楽観主義で攻撃的な傾向が強かったのに対し、CIOは現実主義で保守的な傾向が高かった。

 「CEOの視点や考え方を理解し、それに沿った説明ができるようになれば、ITに対するCEOの理解も得やすい。結果的に企業のIT活用を促進し、CIOの地位は事務的リーダーからビジネス・パートナーへと上がっていく」とアロン氏は力説する。「例えば、あるIT投資に対して局所的な効果を説明するだけでなく、買収される際の資産価値がどれだけ高くなるなども説明できるとよい。実際、そうすることでIT投資を続け、企業の資産価値と競争力を拡大し続けている企業もある」。

 もちろん、「CIOだけ努力しろ」とアロン氏は言っているわけではない。「CEOはもっとITの価値を理解すべきだし、CIOの評価方法も変えるべきだ」と指摘する。「減点主義的な評価をする社風からは、会社を成長へ導く攻めの発想は生まれない。CIOがアグレッシブに行動できる社風にすることが、ITで会社が成長する秘訣かもしれない」。

目次 康男=日経コンピュータ