総務省は7月30日、電波利用料に関する説明会を開催した。この中で、UHF帯の無線ICタグのリーダー/ライターに、電波利用料を課す可能性があることを明らかにした。

 同省は現在、携帯電話事業者など主に無線基地局を運営する事業者に課されている電波利用料の制度を見直している。7月22には同省の「電波有効利用政策研究会」が最終報告書案をまとめた。説明会はこの報告書案を受けたもので、事前に無線LANへの電波利用料課金の可能性が報じられたこともあり、電機メーカー関係者を中心に多くの聴衆が集まった。

 電波利用料制度における現在の検討課題は「免許不要局(機器)からの徴収」と、「国や自治体からの徴収」の2点。なかでも前者は、無線LANやICタグ関係者の関心を集めている。無線LANのアクセス・ポイントやICタグのリーダー/ライターは免許不要局に相当するからだ。これに対して総務省は、説明会の冒頭に、現在2.4GHz帯や5GHz帯で使われている無線LANは課金対象にならないことを明言した。同様に、2.4MHzや13.56MHzのICタグのリーダー/ライターも、課金対象にはならない。

 ただし、来春にも国内で利用可能になる見込みのUHF帯ICタグのリーダー/ライターは、課金の対象になる可能性がある。その理由について、同省は「専用/共用」という概念を挙げる。

 2.4GHzなどの周波数を使う既存のICタグは、無線LANなど他の用途の機器と同じ帯域の電波を共用している。いわば、ICタグ専用の帯域を必要としない「すき間利用」である。これに対して、UHF帯ICタグには専用の帯域(950M~956MHz)を排他的に割り当て、当面は他の用途に使わせない可能性が高い。特定用途で専用の帯域を使う場合には、受益者にそれなりの負担を求めるべき、という考え方だ。電波利用料の徴収方法は決まっていないが、メーカーが製品に数百円を上乗せして出荷し、一括して国庫に納める方法が考えられる。

 UHF帯ICタグだけでなく、今後登場する無線通信機能つきの家電にも、電波利用料が課される可能性がある。総務省は今後、4.4G~4.9GHzのうち一部の帯域を、ハイビジョン・テレビなどデジタル家電の映像伝送用に割り当てることを検討している。

 実際には、これらの機器に対する課金が最終決定されたわけではない。研究会に参加した委員の意見は割れており、今回の報告書案は両論を併記する形となった。同省はパブリック・コメントを8月24日まで受け付けている(関連サイト)。今回の説明会を受けて、Auto-IDラボ・ジャパンなどの国内関係団体が、UHF帯ICタグについてのパブリック・コメントを提出する見通しである。

本間 純=日経コンピュータ