日本OSS推進フォーラム 桑原洋代表幹事
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中国OSS推進連盟 専門家委員会 陳冲主任
中国OSS推進連盟 専門家委員会 陳冲主任
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日本OSS推進フォーラム 桑原洋代表幹事
中国OSS推進連盟 専門家委員会 陳冲主任
 「(中国を)放っておくと色々なLinuxが出来てしまう」――。日中韓の3カ国でオープンソース・ソフトの開発や利用を協力して進めるための会議「第2回北東アジアOSS推進フォーラム」(7月27日~29日、札幌市)で、日本OSS推進フォーラムの桑原洋代表幹事(日立製作所・取締役)は、中国が独自路線でLinux標準化に進むことに懸念を示した。

 問題となっているのは、3カ国の政府によるIT局長会議で設立を合意した、三つのワーキンググループのうちの一つ「標準化・認証研究」。

 三つのワーキンググループは、今年4月に北京で開催された第1回会議での合意事項と、その後における各国の活動結果を受けて、3カ国の各OSS推進フォーラムが協力して進められるテーマとして今回新たに合意したもの。残り二つは「技術開発・評価」と「人材育成」である。標準化・認証研究は、中国から強い申し入れがありワーキンググループの設立に至ったが、実はその内容についてはまだ3カ国で考えが一致していない。

 その理由は、中国はデスクトップLinuxについて3カ国の標準を作り、共同開発したいと考える一方、日本は世界からの孤立を懸念して反対しているからだ。

 デスクトップLinuxに力を入れたい中国の考えは、「サーバーは欧米がすでに強みをもち、組み込み系は共同開発に合わない。デスクトップならまだ世界で市場ができはじめたばかりで、3カ国が協力すればリーダーになれる」(中国OSS推進連盟の専門家委員会 陳冲主任)というもの。同会議では、共同開発のためのサイトの立ち上げやコミュニティの結成を提案した。

 中国は、すでに200ページにおよぶ標準化案を用意している。機能要件が多いようだが、APIレベルの内容も含んでいる。これを受け入れて3カ国で開発を進めていけば、まさに「アジア版デスクトップLinux」が出来ることになる。

 日本側のスタンスはこれとは違う。アジア地域で共通して問題となる文字コードの技術などを標準化し、それをLinuxコミュニティに提案していくという姿勢だ。中国政府が国策として強力にLinuxを推し進めるのとは異なり、日本政府は現場の開発者レベルが協力できることをメリットと考えている。

 同フォーラムは、三つのワーキンググループについて10日以内に各国で検討チームを作り、具体的な内容を話し合っていくとする。日本側は、中国が独自路線を歩まないようなだめていく方針だ。すでに技術者レベルでの会合が日本で持たれており、政府関係者によると「技術者レベルは中国側の理解が得られた。ただ中国側にも色々な人がいるため、これから話し合っていかなくてはいけない」と予断を許さない状況である。

森側 真一=日経コンピュータ