日本航空(JAL)が取得したビジネスモデル特許が、ライバル企業である全日空(ANA)に向けて火を噴いた。JALは7月23日、ANAが展開している法人向け国内線予約・発券サービスが、JALの持つビジネスモデル特許を侵害しているとして、ANAを東京地裁に提訴した。ANAに対してシステムの使用中止と、100億円の損害賠償を求めている。27日に明らかになった。

 焦点となっているJALのビジネスモデル特許は、法人顧客からのチケット予約をインターネットで受け付けて、料金は後で法人・部署ごとに一括請求する、というもの。個々の搭乗者を特定し発券する際は、マイレージ・クラブの会員番号、予約番号を使う。法人ごとの一括精算や割引処理には、法人IDを使用する。JALはこの特許を、「JAL ONLINE」として事業展開している。

 ビジネスモデル特許に詳しい、オンダ国際特許事務所の恩田誠所長(弁理士)は、今回の紛争に関して、「ANAのシステムの詳細についてはわからないので何とも言えないが、ビジネスモデル特許についての裁判例は非常に少ないこともあり、場合によっては(裁判が)さまざまな方向に進む可能性がないとは言えない。裁判の行方が注目される」とコメントする。

 JALの持つ特許の正式名称は、「ID情報利用の搭乗券発行システム」(特許番号:第3179409号)。登録日は2001年4月13日。JALのWebサイトでも内容を確認できる。特許の出願はそれより2年さかのぼる1998年5月だった。

 JAL ONLINEのサービス開始は1999年1月。一方、今回提訴されたANAは、問題の予約・発券サービス「ANA@desk」を、2000年10月から提供している。どちらも契約企業数は約1万強である。

 JALは以前から、競合のANAに対して“冷戦”を仕掛けていた。ANAがANA@deskを開始した直後には、当時JALが出願中だった特許への抵触可能性を問う「見解書」を送付。さらに特許を取得した直後の2001年6月には、特許との相違点を問う「質問書」を、ANAに送っていた。このとき、JALとANAはシステムの相違点について意見を交わす会合を開いている。

 そして3年後のいま、JALはANAを正式に訴えた。なぜいまなのか。JALは次のように語る。「以前から、ANAには『特許権を侵害しているのでは』という旨の質問書や警告書を何度も送っていた。しかし、回答は『侵害していない』の一点張り。当社は再三再四、明確な技術根拠を提示してもらえるよう要請してきた。満足な回答がいつまで待っても得られなかったので、このたびやむを得ず提訴に踏み切った」(JAL広報)。

 JALの言う通り、ANAの見解は以前から「特許侵害の事実はない」で一貫している。ANAの広報は、日経コンピュータの問い合わせに対して次のように回答する。「訴状を受け取っていないので現時点ではコメントしかねるが、当社のシステムはJALのものとは技術的に異なっていると認識している。以前からJALに対してはそのように回答し続けてきた」とする。「2001年6月の会合のときに、JALに対して特許の侵害に当たらない旨を説明した。当社としては、JALには理解してもらえた、という認識だ。今回、突然提訴に踏み切った真意を測りかねる」と続ける。

高下 義弘=日経コンピュータ