「我々のソフト・ベンダー買収は失敗しない」。米EMCのマーク・ルイス主席副社長(写真)はきっぱりと言い放つ。ルイス主席副社長はEMCソフトウェア・グループの総責任者であり、昨年EMCが買収したストレージ関連ソフト大手の米レガート・システムズや米ドキュメンタムのソフト製品を統括している。EMCは昨年、この2社以外に仮想マシン・ソフト大手である米ヴイエムウエアを買収した。「今後もソフト・ベンダーの買収を続ける」(同)方針だ。

 ソフト・ベンダーを買収する理由について、「EMCが推進する情報ライフサイクル管理(ILM)にはさまざまなストレージ装置に加えて、多くの管理ソフトが必要。ストレージ機器から別のストレージへ動的に移動する、必要に応じてデータを復旧する、コンテンツの種類に応じてポリシーを適用するといった機能が必要になり自社開発では間に合わない」(ルイス主席副社長)とする。

 ILMとはデータの重要度や保存してからの時間、ユーザーの利用頻度などを基に、保存先のストレージ機器を動的に変えていくデータ管理手法である。高価なストレージの容量が、使わなくなった過去のデータで埋まってしまうのを防いだり、過去のデータを必要に応じて引き出したりできる。そのため、ここ1年の間にストレージ・ベンダーの多くがILMに基づく戦略を打ち出した。

 ただ、EMCはILMを実現するためにソフト・ベンダー買収という方法を取った。だが、EMC以外のストレージ・ベンダーは既存ソフト・ベンダーとのパートナ関係を強化することで、ソフトの機能を補完しようとしている。

 ルイス主席副社長は、「ILMを構成する技術は多様。完全に適合した一つのシステムとしてユーザー企業に提供できなければ、ユーザー企業は便利になるどころか混乱してしまう。システムの適合性を実現するためには自社でリソースを確保したほうがいいと判断した」と説明する。

 「他のストレージ・ベンダーも以前はソフト事業に進出、もしくは市場拡大しようとして、ソフト・ベンダーを買収した。だがその多くが失敗している。同じ轍をふまないよう、EMCは買収に際して、ILMを実現するため、という明確な基準を持ち2年かけて買収相手を選んだ」(ルイス主席副社長)と自信を見せる。

鈴木 孝知=日経コンピュータ