「システムの重要性は十分認識している。システム統合の方法については、顧客中心の考えで進めていく」。東京三菱銀行の頭取を務める三菱東京フィナンシャル・グループ(MTFG)の畔柳(くろやなぎ)信雄社長(写真左から2人目)は、7月16日に開催したMTFGとUFJグループの経営統合に伴う記者会見の場で、こう話した。

 畔柳社長のコメントは、「メガバンクのシステム統合は膨大なコストと時間がかかる。両行のシステムを並存させるのも現実的な選択肢ではないか」との、記者の質問に答えたもの。畔柳社長は、「長い間システムを統合できないのは(利便性の面で)よくないが、だからといってシステムが不安定なまま強引に統合するのも、システム・トラブルで顧客に迷惑がかかる。こうしたバランスを考え、具体的な統合方法を研究していく」と続けた。

 畔柳社長は三菱銀行時代、システム部門で第3次オンラインのプロジェクトを率いた経験がある。東京銀行とのシステム統合では、プロジェクトの陣頭指揮を執った。システムに造詣が深い経営トップが、今後システム統合をどう舵取りしていくか。高いスキルを持つUFJ銀行のシステム要員の取り扱いを含めて、注目すべき点である。

 UFJ銀行の沖原隆宗頭取(写真一番右)はシステムの件について、「ATM(現金自動預け払い機)の24時間稼働をはじめ、個人顧客の利便性向上を目指すシステム化を続けてきた。経営統合後もこうした取り組みを続けて、リテール業務をますます強化していきたい」と述べた。

 午後6時から東京都千代田区の経団連会館で行われた記者会見には、MTFGの畔柳社長とUFJ銀行の沖原頭取のほかに、東京三菱銀行の三木繁光会長(写真一番左)とUFJホールティングスの玉越良介社長(写真右から2人目)が出席した。今年7月末をメドに経営統合の基本合意を締結すること、2005年度上期中の経営統合を目指した協議を進めていくことを、発表した。具体的なシステム統合の方法は、現時点では未定。

(大和田 尚孝=日経コンピュータ)