「SOA(サービス指向アーキテクチャ)に基づくシステムを構築する技術はWebサービスだけではない。当社はCORBAの技術を使って、これまでも金融業などに向けてSOAを提案してきた」。米アイオナテクノロジーズのピーター・カズンズ テクニカル・ディレクターはこう主張する。

 同社は分散オブジェクト技術のCORBA(Common Object Request Broker Architecture)関連製品の“老舗”。カズンズ テクニカル・ディレクターは「現在、当社はWebサービス関連製品を手がけているが、CORBAで培ったノウハウが強みになっている」と誇る。例えば、「Webサービスはトランザクション管理、セキュリティ面、パフォーマンス、負荷分散、フェイルオーバーなどの点で不安が残る。当社のWebサービス関連製品Artixでは、CORBAの技術でこうした弱点を補っている」。

 Artixは既存システムの機能をWebサービスとして呼び出せるようにラッピングするシステム連携用ソフト。同社のCORBA製品「Orbix」の独自技術を流用し、セッション管理、トランザクション管理、負荷分散など、Webサービスの仕様だけではまだ実現が難しい機能を実装した。Webサービスにおける標準プロトコルの「SOAP」以外にもプロトコル変換が可能。そのため、日本BEAシステムズのトランザクション処理モニター「BEA Tuxedo」や日本IBMのメッセージ転送ソフト「WebSphere MQ」など、異なるベンダーのミドルウエア間における連携を実現する。

 カズンズ テクニカル・ディレクターは、「どんな技術を採用するかは重要ではない。システムの処理をできるだけ分散することに意味がある」と熱弁する。「WebサービスやCORBAのほか、IBMのMQを使ってSOAを実現した企業も多いだろう。いずれにせよ、SOAに基づいたシステムは集中型のシステムに比べて大幅に経費削減できる」。

 SOAとは、ハードウエアやソフトウエアといった視点からではなく、情報システムが持つ機能(サービス)の視点からシステム全体を捉える考え方。この考え方にのっとれば、情報システムは相互に連携しあう、複数の「サービス」の総体とみなせる。それぞれのサービスは独立して動作するため、再利用が容易。ビジネス・プロセスの変化にも柔軟に対応できるようになる。

矢口 竜太郎=日経コンピュータ