「仮想化技術とサーバー統合は相性がいい。その組み合わせによって投資効果が非常に高いシステムを構築できる」。こう力説するのは、米ヒューレット・パッカード(HP)でユーティリティ・コンピューティングを担当するニック・バンダージープ ディレクター(写真)だ。

 サーバーやストレージ、ソフトウエアといったリソースを仮想化して動的に再配置する仕組みがあれば、一つのシステムのなかで、負荷が高まっているサーバーにリソースを集めることが可能になる。これによってビジネスの状況変化に強いシステムが構築できる。さらに、営業や物流、会計といった部門ごとに立てているサーバーを統合し、そこに仮想化の技術を活用すれば、システム間のリソースの再配置ができる上に、運用コストも削減できる――というのがバンダージープ氏の主張である。

 例えば電子機器製造・販売の米ベルキンは2003年11月、11台のUNIXサーバーに分散していた複数の基幹システムをHPの大規模UNIXサーバー「Superdome」に統合し、仮想化技術「VSE(Virtual Server Environment)」を用いてリソースの自動的な再配置を実現した。仮想化技術採用のそもそもの目的は、売上高で年間35%増と急成長中している同社のビジネスの変化に合わせて柔軟に拡張できるシステムが必要だったから。しかし、運用コスト面でも、「少なくとも年間14万ドルのコストを削減した」(バンダージープ氏)という。

 ただ、「複数の部門をまたいだサーバー統合は、一足飛びに行うのは容易ではない」とバンダージープ氏は注意を促す。多くの企業は部門ごとにIT予算を分割管理しているため、予算を取り上げられることに対して既存組織が抵抗を示す場合があるからだという。「できるところから徐々に統合し、縦割りの弊害を取り除く効果を見せていくのがよい」とバンダージープ氏は提案する。

広岡 延隆=日経コンピュータ