「社会保険庁や特許庁、国税庁のシステムは多くの国民を対象として管理するものだ。その処理はバッチ系が大半である。現在のオープン系の技術で、従来と同じ信頼性を持つシステムを開発するのは難しい」。

 現在、レガシー・システムと呼ばれるメインフレーム上に開発した、官庁の大型システムの見直しが進んでいる。見直しの過程では、コスト削減の観点からオープン化を前提に再構築すべきではないか、という声が高まっている。こうした考え方に対して、冒頭のような理由で懸念を明らかにするのは、日立製作所の小野功執行役副社長である。日立が7月6日に開催した情報・通信事業戦略説明会の中で、小野氏が明らかにした。

 さらに小野副社長は、「こういった巨大なシステムをオープン系で再構築することになれば、かえって膨大なコストが必要になるのではないか。当社は、こういった事実があることを、堂々と提案していきたい」と話す。

 社会保険庁や特許庁は、同社にとって長年の大手顧客である。小野氏の発言は、開発や運用の実態を知る日立の幹部として、レガシー・システム刷新論議に一石を投じるものといえるだろう。

(中村 建助=日経コンピュータ)