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 「テレビ通販はライブ感が命。コールセンターに入ってくる顧客の生の声を、撮影現場に即座に伝えるシステム作りを心がけた」。テレビ通販大手であるQVCジャパンの牛嶋信滋バイスプレジデントは、同社が5月に運用を始めた新システムについて、こう説明する。

 QVCジャパンは今年5月に24時間生放送を開始。新システムはこれを支えるもので、コールセンターでの注文受け付けから在庫管理、番組制作まで担当する。深夜の録画放送を生放送に切り替え、併せて情報システムを刷新したことで、時間帯によっては売り上げが最大5割増加したという。

 新システムの目玉は、サン・マイクロシステムズの大型UNIXサーバーとOracle Database 9i、Oracle Real Application Clusters(RAC)を組み合わせたデータベース・システム。Oracle Database 8を使った従来のシステムと異なり、24時間、無停止で稼働できるのが特徴だ。

 これまでは、深夜のメンテナンスでシステムを停止する必要があったこともあり、午後11時~午前8時までは録画番組を放送してきた。すべて生放送に切り替えた現在では、午後11時~午前2時と午前5時~午前8時の時間帯で、売り上げが以前より約5割増加した。

QVCジャパンの撮影スタジオの様子 QVCが生放送枠の拡大にこだわるのは、商品の受注状況を現場の番組プロデューサにリアルタイムに伝えることで、機動的な番組編成が可能になるからだ。コールセンターから入ってくるデータをリアルタイムにグラフ化し、撮影スタジオ脇で指示を出すプロデューサの前に刻々と映し出す(写真)。

 プロデューサは、商品が人気で完売間近になったり、逆に不人気でさっぱり注文が入らない場合、早めに番組内容を次の商品の紹介に切り替えることができる。さらに、「ドレスを後ろのアングルからも見せてほしい」といった顧客の要望を、すぐさま番組の演出に反映することも可能だ。一方、コールセンターでは、番組で紹介中の商品をオペレータの操作画面に常に表示し、番組内容を変更しても問題なく受注できるようにしている。

 こうした工夫により、生放送では録画放送よりもモノがよく売れる。「たとえ30分でも、システムを停止させれば我々の生放送は成り立たない。無停止システムの導入は24時間生放送の前提条件だった」と牛嶋氏は話す。

 24時間生放送の開始に伴い、QVCはコールセンターの規模を160席から240席に、音声自動応答システムの規模を186回線から400回線に拡大した。これに合わせて、システム全体の処理能力も約4倍に高めた。

本間 純=日経コンピュータ