SAPジャパンの藤井社長 SAPジャパンは6月17日、従業員200人以下の中小企業を対象にした新ERPパッケージ(統合業務パッケージ)製品「SAP Business One」の出荷を開始した。既存製品である「R/3(mySAP Business Suite)」のコンセプトを引き継ぎつつ、中小企業向けに機能を限定。価格を、1社10ユーザーで280万円程度に抑えた。2004年中に700社への販売を狙う。同社の藤井清孝社長(写真)は、「市場の引きを考えると十分可達成可能な数字」と自信を見せる。

 Business Oneは、財務会計や管理会計、販売・仕入れ・在庫管理、レポーティングなどの機能を併せ持つ。R/3(mySAP Business Suite)が提供する機能と類似しているが、「それぞれの機能の深さが異なる。例えば、複雑な組織構成を設定する機能は持たない」(九十九桂子SBOソリューションズSBOソリューションズオーナー)。追加ソフト(アドオン・ソフト)は、R/3の開発言語ABAPではなく、CやC++、Visual Basic、Javaなどで開発できる。Business Oneの導入にかかる期間は、「欧米の例を見ると、2週間から4週間程度」(藤井社長)。

 興味深いのは、Business Oneの販売形態をパートナー経由の間接販売で進めること。SAPジャパンは基本的に、製品ライセンスを直接販売する形を採っており、パートナーはコンサルティングやシステム・インテグレーション、アドオン開発などのサービスや、ハード、ミドルウエアなどのプラットフォームを提供するという位置づけになっている。6月17日時点で、Business Oneの販売パートナーはNEC、デル、日本IBM、日本ヒューレット・パッカード、日立情報システムズなど13社。「年内に少なくとも20社に拡大する」(藤井社長)。

 SAPジャパンが中小企業市場に参入した背景には、「ERPパッケージのビジネスはちょうど端境期にある。製造業を中心とする大企業向けの需要はほぼ一巡し、中堅中小の製造業や非製造業、サービス業にシフトしつつある」(藤井社長)という事情がある。同社は昨年3月から中堅企業向けに、テンプレートを使ったERPの短期導入サービス「mySAP All-in-One」を提供しており、「当社の総売上の15%近くはAll-in-Oneによる」(同)。Business Oneの投入で、これまで手薄だった中小企業を開拓していく考えだ。当面は、R/3を導入済みの大企業のグループ会社を中心に売り込んでいくとみられる。

 「10ユーザーで280万円」は、Business Oneの機能すべてを利用できるプロフェッショナルユーザーの場合。これは割引価格の例で、プロフェッショナルユーザーの正式価格は、1ユーザーあたり35万円。アドオンだけを利用するベーシスユーザーの場合、1ユーザーあたり2万1000円となる。

島田 優子=日経コンピュータ