シスコシステムズは6月7日に米国で発表した、自己防衛型ネットワークについて、詳細を明らかにした(写真)。トレンドマイクロと協業して提供する。シスコのスイッチやルーターに、トレンドマイクロのウイルス駆除用パターン・ファイルをダウンロードしてウイルスの侵入を防ぐ機能の提供を、年内にも開始する。来年初頭から、さらに機能を段階的に強化する。

 自己防衛型ネットワークとは、自身でウイルスやワームによる被害を防ぐことができるネットワークのこと。従来の企業ネットワークのようにインターネットからの侵入・感染を防ぐだけでなく、スイッチやルーターにウイルス対策機能を搭載することにより、社内に持ち込まれるノート・パソコンなどからの侵入・感染を防ぐ。

 今回のトレンドマイクロとの提携はその一環。シスコシステムズのルーターやスイッチ、ファイアウォールにウイルス検知機能を搭載する。ノート・パソコンが送信するパケットを監視し、感染していることを検知すると、ネットワークへの接続をいったん禁止。ウイルス駆除プログラムを感染しているパソコンに配信する。

 トレンドマイクロは、「ネットワーク型ウイルス」を駆除するためのパターン・ファイルを提供する。ネットワーク型ウイルスとは、SQL SlammerやBlasterのように、OSやアプリケーションのぜい弱性を利用してネットワーク経由で感染するウイルスまたはワームのことである。

 シスコは、来年以降も段階的に自己防衛型ネットワークの機能を強化する。例えば、パッチの適用やウイルス対策ソフトの有無、パターン・ファイルが最新かなどを調べるプログラムをスイッチやルーターからクライアント・パソコンに配信する機能や、ウイルスに感染したパソコンからウイルスを駆除して復旧させる機能などを追加する。

 シスコは、昨年11月にトレンドマイクロ、米シマンテック、米ネットワーク・アソシエイツとの協業を発表。その際に明らかにした「Ciscoネットワーク アドミッション コントロール(NAC)」は、三社のクライアント向けウイルス対策ソフトにシスコシステムズのモジュールを組み込み、クライアントのセキュリティ対策状況をチェックするものだった。

 今回提供する機能は、クライアントにウイルス対策ソフトを導入していなくても、ネットワーク型ウイルスの侵入を防げる点がNACと異なる。ユーザーは、ルーターやスイッチのOSを有償でバージョンアップすればこの機能を利用できる。パターン・ファイルを利用するための契約は、別途トレンドマイクロと結ぶ必要がある。

(福田 崇男=日経コンピュータ)