ヤフーと日本音楽事業者協会(音事協)は6月14日、「Yahoo!オークション」における肖像権侵害に共同で取り組むことを発表した。現在、Yahoo!オークションへの出品は633万件あり、タレント関係だけで5万件に上る。イベントやコンサートの会場でアイドルなどを無断撮影した生写真や、有名人を個人的に撮影した写真なども多数出品されている。これらの出品物の中に、肖像権侵害に当たるものがあると判断した。

 音事協の尾木徹常任理事(写真左)は、「これまでの活動で、新聞や雑誌などの商業メディアには肖像権を守る意識が浸透した。これからは個人に対して肖像権の保護を訴える時代になった」と説明する。肖像権は自らの写真を無断で撮影され、公表されるのを拒否する権利である。

 肖像権の侵害を防ぐために、音事協とヤフーは肖像権を侵害している物の出品状況を調査したり、オークション・サイトから削除する基準を策定したりする。ヤフーは音事協から肖像権侵害の連絡が入ると、直ちに出品物を削除する。削除の基準や実施時期については、「事前に発表すると悪意を持った出品者に抜け道を考えられてしまう」(ヤフーの別所直哉法務部長、写真右)との理由で公表しない。

 オークションサイトを運営するヤフーは、電気通信事業法が定める「事前検閲の禁止」によって出品物を事前にチェックすることができない。またヤフー側は出品物について、出品物の写真画像や簡単な説明文程度しか情報を得ることができないため、「肖像権の侵害の問題があることは分かっていたが、具体的に侵害があるかどうかを判定するのが難しかった」(ヤフーの別所法務部長)。

 音事協は肖像権の権利者である芸能プロダクションなど100社を会員に持つ。今後は、音事協の会員である権利者からの連絡によって、肖像権侵害を把握することができるので、問題のある出品物を迅速に削除できる。ヤフーの別所法務部長は、「削除を続けていけば、違法な出品自体も次第に減っていくだろう」と期待している。

(坂口 裕一=日経コンピュータ)