「IBM以外のメインフレームをお使いの方は不幸だ」。日本IBMの榊幹雄 ICPシニア・コンサルティングITスペシャリストは6月11日、IBMメインフレーム「システム/360」の誕生40周年を記念した講演でこう語り、場内のIBM製メインフレーム・ユーザーの喝さいを浴びた。IBMのほうが他社よりもメインフレームの技術開発に力を注いでいるというのが、「他社製ユーザーは不幸」の理由である。

 榊ITスペシャリストによれば、メインフレームのユーザーがシステムに変更を加えるタイミングには3パターンあるという。

 第1に、アプリケーションが寿命を迎えたとき。既存のアプリケーションが、ビジネスの状況に合わなくなったことを指す。この場合はソフト、ハードとも再構築する場合が多く、多大なコストを要する。しかし、「システムはその後15~20年もたせることができるだろう」と、榊ITスペシャリストは予測する。

 第2に、プラットフォームが寿命を迎えたとき。ハード・メーカーが過去の技術を継続して開発する意志を持たなくなったことをいう。冒頭のコメントが飛び出したのは、このパターンを説明している最中である。「当社以外のメインフレームのユーザーは、(他メーカーの開発がいつまで続くかわからないので)いずれハードウエアを替えなくてはいけないだろう」(榊ITスペシャリスト)。

 その際、他社製メインフレームのユーザーは、アプリケーションはそのままで、ハードウエアをUNIX機に移行するかIBM製メインフレームに移行するかの選択に迫られることになる。「ハードが何になっても、アプリケーションは古いまま」(同)。こうしてIBM製以外のメインフレーム・ユーザーは不幸になるというわけだ。

 第3に、ユーザー企業が既存システムを、より業務の変化に強いものに移行するとき。3パターンのうち、唯一前向きといえる。榊ITスペシャリストは、「オン・デマンド化への投資」と表現する。この場合は、アプリケーション、プラットフォームともに、まだ寿命を迎えていないことが前提になる。IBM製メインフレームを使っている場合を指すとみられるが、榊ITスペシャリストは特に明言せず、「既存アプリケーションをコンポーネントとしてラッピングし、必要に応じて呼び出すSOA(サービス指向アーキテクチャ)が実現できる」と主張した。

矢口 竜太郎=日経コンピュータ