総務省と経済産業省は6月8日、「電子タグ(ICタグ)に関するプライバシー保護ガイドライン」を共同で発表した。両省はガイドラインを策定することで、自分の持ち物に付いているICタグが知らない間に他人から読み取られてしまうといったプライバシ侵害を防ぎたい考え。

 実は両省がICタグに関するプライバシ保護ガイドラインを出すのは今回が初めてではない。3月16日には経済産業省が「電子タグに関するプライバシー保護ガイドライン」を、3月30日には総務省が「電子タグの利用におけるプライバシー保護のためのガイドラインの枠組」を相次いで発表している。ICタグの導入を進める業界団体などからは、「どちらに従えばいいのか分からない」といった声が出ていた。今回はこの二つのガイドラインを統合した格好だ。

 ガイドラインの柱は大きく三つ。一つは、ICタグが商品に付いていることを消費者に知らせること。具体的には、商品のどこにICタグが付いており、どんなデータが格納されているかを、商品などに表示して知らせなくてはならない。

 二つ目が、ICタグを無効にする方法を消費者に知らせること。ガイドラインではICタグを無効にする方法として、「商品に付いているICタグを取りはずす」や「ICタグに格納しているデータを消去する仕組みを用意しておく」、「ICタグをアルミ箔など金属で覆う」といった例を挙げ、これらの方法を消費者に認知させねばならないと定めている。

 二つ目で注意したいのは、ICタグを無効にすることによって消費者または社会の利益が失われる可能性があるときは、それについても消費者に告知しなければいけないことだ。例えば、「牛肉に付いたICタグを取りはずすと生産履歴が見られなくなる」、「携帯電話に付いたICタグを無効にすると、どの部品がリサイクル可能か分からなくなる」といったことを消費者に知らせる必要がある。

 最後が、ICタグのデータを他のデータと組み合わせることで個人が特定できる場合には、ICタグのデータも個人情報として取り扱うことだ。商品に付いているICタグのデータと、その商品を購入した消費者を特定できる氏名や住所といった個人情報を販売管理システムなどでヒモ付けしていれば、仮にICタグに数字データしか入っていないとしても個人情報となる。

 総務省情報通信政策局技術政策課の石川英寛研究推進係長は、「このガイドラインはプライバシを保護する上で基本的な事項をまとめたもの。これを基に各業界でより細かく定めてもらいたい。もちろんプライバシ保護のあり方が変わる場合には、このガイドライン自身も修正する」と語った。

(松浦 龍夫=日経コンピュータ)